いまの新車からは消えた「化石技術」だがハマると抜け出せない「キャブレター」の魅力 (2/2ページ)

クルマと「対話」をしている感が魅力

 まず手間がかかるということ。寒いとチョークを引かないとダメだし(これまた過渡期にはオートチョークがあったが)、暖かい季節でもアクセルを少しあおったりしてかける必要がある場合もあった。サイズが大きくなったり、ツインキャブのように多連になるとその傾向は顕著なのだが、クルマと対話しながら目覚めさせていくのは楽しかったし、コツをつかめばスムースにかかるようになって、なにやら上達した気にもなった。また、季節によって調整したり、エアクリーナーの吸入口の向きを変える必要もあったりして、面倒を見てやっている感も魅力のひとつだ。

 そして最大の魅力が走り。ウェーバーやソレックスなどのチューニングキャブに交換すれば豪快な吹き上がりが楽しめたし、今のフライバイワイヤーでの制御のように電気信号を介したりせず、ワイヤーで直接引っ張るので、足で踏む=フラップが開いて空気と燃料がエンジンに流れ込む感覚があった。実用車のシングルキャブではもちろん豪快ではなかったが、それでもアクセルに対して自然な反応で、そこそこ楽しめたものだ。

 さらにマニアックなレベルになると、セッティングが簡単に変えられるという点も魅力になる。今のクルマもコンピュータを書き換えればできるだろうが、プロに頼むなど手間も費用もかかる。一方、キャブの場合はジェットと呼ばれるパーツを交換すれば、燃料の量を簡単に変えられたし、ジェットは小さいものなので、価格もそれほど高くはなかった。

 ただ、ひと口に交換といってもひとつだけ変えればいいわけではなく、アイドリングから加速、中間、全開まで、さまざまなジェットが担当している。どうやって最適なところを見つけるかというと、実走しながらそれぞれでのフィーリングの変化やプラグの焼けなどを見るのが定番。季節はもちろん、天気やその場所の高度でも変わってしまうのではまってしまうと、全然セッティングが出ないということになったが、決まったときの気持ちよさは格別だった。

 一見すると手間はかかるけど、対話をしながらエンジンをかけ、調子を見て整えてやる。インジェクション時代の今、もうなくなった楽しさがキャブレターでは味わえると言っていい。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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レストア、鉄道模型(9mmナロー)、パンクロック観賞
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