何がそんなに魅力的なのか? ロータリーエンジン復活が期待される理由と可能性 (2/3ページ)

レース仕様は国内のみならず海外でも存在感を示した

 ロータリーエンジンは排気量が小さいが、1回転で2度の爆発燃焼を起こす。そのため2回転で1度の爆発で回転する4サイクルのレシプロエンジンより2サイクルのエンジンに近い出力特性となり、レースで使う場合はロータリー係数をかけられる。

 レース登場初期はその係数は爆発回数からそのまま2とされていた。つまり491ccなら1000cc。2ローターなら2000ccと同等とされていたのだ。しかしレシプロエンジンの進化に伴い、ロータリーの燃焼効率はレシプロに比べて劣ることが明らかとなってきて、自動車税課税区分においても係数1.5まで引き下げられることとなる。国際レースに出場する時はその都度係数を協議していた時代もあった。

 ロータリーエンジンはその回転特性の好フィールとは裏腹に燃費の悪さが問題でもあった。ボクが乗っていたファミリアロータリークーペでも、都内一般路使用でリッター5km台。3リッター以上のレシプロ車並みで辟易とさせられたものだ。結局その燃費の悪さに嫌気がさし、手放したのだ。

 10A型はローターハウジングの横に開けられた吸気ポートから空気を取り入れるサイドポート方式で、実用性と耐久性の面から選ばれていた。だが、レースではローターハウジングから直接吸気を取り入れるペリフェラルポートが採用されていた。ペリフェラルポートとすることで吸排気効率が向上しパワーアップが図れることから、以降生産車はサイドポート、レース仕様はペリフェラルポートと使い分けるようになった。

 モータースポーツシーンでのロータリーの活躍はファミリアロータリークーペの時代からすでに国際レベルで、ベルギーのスパ24時間耐久レースに出場し、優勝こそ逃したものの長い時間トップを独走したというニュースに胸が踊ったものだ。

 国内でも富士グランドチャンピオンシリーズ(GC:通称グラチャン)に本格的レーシングマシンに搭載して出場するなどロータリーの可能性を常に示し、フランスのル・マン24時間レースでは常に存在感を示していて1991年には遂に総合優勝を成し遂げている。

 この時のマシンに搭載されていたロータリーエンジンはR26B型と呼ばれ、654ccのローターを4連装し2600ccとしたペリフェラルポートの4ローターエンジンだった。市販ではユーノスコスモに3ローターが搭載されたことがあるが、4ローターはこのレース専用のみとなった。

 4ローターエンジンは16気筒並みの爆発サイクルと甲高い排気音が特徴で、その音色は12気筒のF1エンジンを凌ぐほど美しくサーキットに響いていた。僕がル・マンにポルシェで出場したときもマツダの4ローターは走っていて、その音量の大きさに追い抜く時は耳を塞ぎたくなるほど。深夜も早朝も轟音を響かせ、睡眠を妨げられたのを記憶している。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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