かつて高級車にこぞって付けられた「ボンネットマスコット」が減ったワケ (2/2ページ)

ボンネットの突起物は歩行者保護のためにNGとなった

 それは安全面の配慮が関係している。21世紀になってから交通事故における歩行者保護のために、ボンネット上の突起はNGというルール(保安基準)が世界的に広がっていった。

 そのためボンネットはエンジンフードではなく、歩行者保護のアイテムとなった。頭部をぶつけたときの攻撃性を低減するためボンネットとエンジンの間に一定の空間が必要になったり、その空間が確保できない際にはボンネットを浮かせる工夫がなされたり、はたまた歩行者保護用エアバッグを備えるクルマまで登場している。

 そうした流れにあって、立派なフードマスコットをつけていることは、歩行者保護を軽視しているような悪いイメージにもつながりかねない。前時代的なアイテムとなりつつあることで、世界的にフードマスコット採用車は減っている。

 なお、歩行者保護の観点からフードマスコットについては禁止というわけではなく、可倒式とするなど対策しておけばいいのだが(実際、メルセデスのフードマスコットは根元がバネで動く)、そういう対策をしてまでしてフードマスコットを残そうというトレンドにはならなかったことが、現状につながっているのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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