シニア層向けの実直なセダン需要はまだまだ根強い
クルマ好きなら、ふとした時に「そういえば、あのクルマってまだ売ってたっけ?」などと、地味な実用車や不人気車のことを思い出すものだ。話題性がなく、とっくにフルモデルチェンジの時期を迎えても放置されているように見えながら、延々と販売され続けるクルマはけっこう存在する。
話題性がないとはいえ、やめずに売り続けられるにはそれなりの理由があるし、よくよく見ると地味に魅力的だったりする。今回はそんな、忘れ去られ気味のクルマのなかでも、今あえて注目するに値する5台をピックアップしてみた。いずれも忘れ去るには惜しすぎる、滋味に富むクルマたちである。
1)トヨタ・プレミオ/アリオン
ネームバリューは高く、かつては絶大な人気を誇った実用セダンの代表格ながら、現行型は2007年デビューのご長寿モデル。プラットフォームは先代モデルのキャリーオーバーだったので、車体の基本設計は20年近く前となるが、未だに姉妹車合計の月間販売台数は1000台を軽く超えている。トヨタ・マークXがなくなるなど、日本市場のセダン氷河期に終わりが見えないなか、驚異的な大健闘と言える。
生きたシーラカンス状態が幸いして、今や現行型国産セダンで5ナンバーサイズなのはプレミオ/アリオンだけ。車格では下に位置付けられるトヨタ・カローラでさえボディを拡幅したことにより、5ナンバーのセダンを求める中高年層には最後の砦となっている模様。一方では、「実用セダンこそがクルマのスタンダード」と語るタレントの夏江紘実さんのように、地味セダン好きをアピールする若い女性からもわずかながら支持されている。やはり、侮れない存在だ。
2)日産シルフィ
プレミオ/アリオンでの例と同じく、シニア層向けの実直なセダン需要は根強い。筆者も40代半ばを過ぎてから、地味なセダンでひっそりとした静かなカーライフを送る日々に憧れるようになった。現行型シルフィはデビュー後8年を経過。ここ5年ほどは改良されたとの公式発表はないが、販売は継続中だ(海外向けには新型が発表されている)。といっても、ここ数年の月間販売台数は200台未満を記録する月が多く、人気を保ち続けているとは言い難いのものの、中国を中心にアジアではよく売れているので継続できた。
現代の名工として知られる日産のカリスマテストドライバー・加藤博義さんは「FF車は最後にチェックするだけなのですが、街乗りではシルフィが最高です」と語るなど、一人の中高年ドライバーとして、シルフィの実直さがいたく気に入っている様子だった。新型の国内市場導入を待望する声も少なくなく、地味セダン需要は中高年男性を中心にまだ枯れる気配はない。