エンジンオフで家電もエアコンも使い放題! アウトドア無双確実なのに「ミニバン」に「プラグインハイブリッド」がない理由 (2/2ページ)

ハードや価格の面で想像以上にハードルが高い

 では、なぜ、本格的なミニバンにPHV(PHEV)がないのか? その答えの第一が、EVに不可欠な大容量バッテリーの積載性である。3列シートミニバンは車内空間の広さはもちろん、売れ筋のミニバンはフロアの低さによる乗降性の良さが売り。

 が、PHV(PHEV)化するとなると、数百kg規模のバッテリーをどこかに積まなければならない。さすがにプリウスPHVのようにラゲッジスペース床下、というわけにはいかず(プリウスPHVより大容量のバッテリーが必要)、SUVのように床下にびしりと敷き詰めるのがほぼ唯一の方法だが、それではフロアが高くなってしまう。つまり、乗降性、天井高に犠牲が出てしまうのである。

 そして、そもそも両側スライドドアを備えるミニバンは、背の高さに加え、スライドドア開口部の剛性を出すために補強材が入り、シートが3列席分あることもあって、重くなる。その上で、EV用のバッテリー、それも重量級のミニバンに対応する量のバッテリーを積むとすれば、かなりのヘビーウェイトになることは必至。

 たとえば、アウトランダーのガソリン車とPHEVの車重を、Gプラスパッケージ同士で比較すると、ガソリン車が1590kgのところ、PHEVは1900kgと、バッテリー+補器類を含め310kgも重くなってしまう。それは大人4~5人分に達する。アルファード&ヴェルファイアの2.5リッターガソリン車の車重が2000kg(Gグレード)だから、それが2300~2400kgになってしまうのは、どう考えても重すぎる。プリウスAプレミアム2WDの1380kgに対して、プリウスPHEV Aプレミアムが150kg増の1530kgとなるのとは、重さのレベルが違いすぎるのである。

 それでもけっこう重い本格SUVのアウトランダーにPHEVがあるのだから、ミニバンだってやればできないことはなさそうと思いたいのだが、ミニバンの場合、最大7~8名乗車になるわけで、自動車メーカーは大人のフル乗車時の走行性能、乗り心地、経年変化による商品性まで担保しなければならないところが、商品開発のネックになりうるのだ。

 それでも、ミニバンのPHV(PHEV)化はリチウムイオンバッテリーの革新的進化&小型軽量化、パッケージング技術、超軽量化技術の推進によって、将来的に重さに関しては克服できるかもしれないが(アウトランダーPHEVの電動技術を生かしたデリカD:5のPHEVとか、あるといいだろうな~)、いかんせん克服できそうもないのが、価格だ。

 現時点でプリウスとプリウスPHVをAプレミアムグレードで比較すると、PHVは65万1200円も高くなる。ガソリン車対PHEVで、アウトランダーを比較すれば、ガソリン車のアウトランダーGプラスパッケージ4WDが342万1000円のところ、アウトランダーPHEVのGプラスパッケージ4WDは458万2600円と、コンパクトカーが1台買える、約116万円高になってしまうのだ。

 そう、売れ筋ファミリーミニバンの例で、ヴォクシーのHYBRID ZSは今、334.73万円だが、それがPHV化で、プリウス→プリウスPHVの価格差から見積もった約65万円高の400万円の高額車になったら(リチウムイオンバッテリーの価格が劇的に安くならない限り)、果たして多くのファミリーユーザーが手を出すだろうか。

 もちろん、VIP向けにアルファードPHV(があるとして)を600~800万円で売ることができたとしても、その販売台数は、日本においては極めて限定的だろう。ミニバンのPHV(PHEV)は、あれば確かに魅力的かつ理想に近い電動多人数乗用車であり、また、災害時の電源供給車、プライベートな避難場所としても大活躍してくれそうだが、それを成立させるには、ハード、価格を含め、現時点では想像以上にハードルが高いということなのである。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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