車体の重量増しに合わせた結果が660ccだった
車体寸法が拡大されるにつれ、当然のように車両重量が重くなり、エンジン排気量の拡大によって出力の確保が行われてきた。それでも、最高出力が64馬力であることに変わりはないが、排気量の増大は低速トルクの向上につながり、日常的な使い勝手が改善される。
スズキ・アルトを例に見てみると、550cc時代の車両重量は550~600kgあたりだ。660cc時代になると、車体寸法の拡大があったことで600~700kgくらいに重くなる。重量増の比率は、16%増しくらいといえる。この比率をそのままエンジン排気量に当てはめると、550ccの1.16倍は640ccとなる。さらに、コンパティビリティと、側面衝突に対する車幅の拡幅も加わると700kg以上に車両重量が増え、800kg台の車種もあるので、660ccという排気量は、ゆとりを持たせたちょうどよい排気量といえそうだ。
しかし現行のアルトの車両重量は、610~700kgと軽量化されている。衝突安全を満たしながら、プラットフォームや車体の設計を見直し、加えて超高張力鋼板という軽くて強靭な材料を利用することにより軽く仕上げられるようになったため、いまの軽自動車は自然吸気エンジンでも加速がよく、元気な走りを味わえる。
今後は、軽自動車にもハイブリッド化や、電気自動車(EV)が広がっていく可能性がある。すでに三菱自のi-MiEVが2009年に発売されたように、モーターだけで走るようになると、排気量という枠組みができなくなる。そして現行のエンジン相当の性能といわれるモーターを使っても、出足の勢いはモーターのほうが優れる。エンジンに比べ、モーターは低速トルクが大きいからだ。
今後は、軽自動車の動力源に対する規定も、排気量ではなく最高出力や最大トルクといった指標で定められるようになっていくかもしれない。