改良の度に買い替え進化を体感するユーザーも
このようにつねに進化させると、前期型を購入したユーザーが中期型に乗り替え、さらに最終型を買うことも起こり得る。フルモデルチェンジをしなくても、改良を評価して購入するのだ。不満な点が改良されると、出会ったことのない開発者と気持ちが通じ合った気分にもなるだろう。「この進化は俺じゃないとわからないな」といった密かな満足感も味わえる。
フルモデルチェンジを行うなど新型車として発売された直後には、ランニングチェンジを実施することもある。公式には発表せず、生産を続けながら改良することだ。昨日と今日では、足まわりのセッティングなどが変わる。稀にだが、走行安定性の不満が解消された代わりに乗り心地が硬くなり、「ここまで変えると、販売店の試乗車も入れ替えないとマズイでしょう」と思うようなランニングチェンジもある。
新型車として発売されると、修正したい課題が生じることもあるが、マイナーチェンジや一部改良は先の話だ。そこで状況によってはランニングチェンジで修正する。あまり褒められることではないが、商品力を保つためには必要だ。
細かな改良を頻繁に実施して進化させるのは、基本的には良いことだが、「買った直後に改良されるのは嫌。購入時期を決めにくい」という話も聞く。それなら車種ごとにスケジュールを定めれば良い。「改良の規模はわからず、場合によっては特別仕様車の追加かもしれないが、この車種は6月に必ず何かを実施する」となれば、ユーザーも購入計画を立てやすい。
またマイナーチェンジや一部改良で対応できる範囲にも限界がある。開発者からは「衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能の大幅な進化には、フルモデルチェンジが必要な場合もある」という話も聞く。確かにGT-R、フェアレディZ、86には、衝突被害軽減ブレーキが採用されていない。最長でも発売から10年を経過したら、フルモデルチェンジを実施すべきだ。