欲しいものが全部揃った装備と加速フィールは一級品!
Dレンジボタンを押し、アクセルを踏み込めばモーターによりスルスルと走り始める。ほどなくエンジンも始動するが、これは発電のためで、エンジン始動によるトルク変動などのショックは皆無だ。バッテリー充電量が十分でエンジンが暖気されていればEVモードボタンを押すことでEV走行に徹することもできる。駆動用電気モーターの最高出力は184馬力。最大トルクは315N・mを0回転から発揮できるので加速フィールは強力でドライバビリティも申し分ない。
フル加速ではエンジンの回転も上昇するが、これが加速力自体をアシストするわけではなく、ドライバーが感じる加速感を高めるのみ。エンジン回転が高まってもアクティブノイズコントロール(ANC)の効果でノイジーさはそれほど高まらず、走行中の静粛性や質感は高いといえる。
また、サスペンションは極めてしなやかなストローク感とジェントルな乗り心地を実現している。ホンダとしては初のアダプティブダンパーシステムを採用し「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」の3モードから選べる。各モードによりアクセルの制御やステアリングのアシストなども変化し、それぞれが価値あるドライブフィールに仕上げられていた。
後席にも乗り込んでみたが、55mmも拡大されたホイールベースの効果で後席足もとスペースの広さは圧倒的だ。
前席助手席シートには後席からもアジャストできるスイッチが備わり、状況に応じて最適なスペースを設定できる。また後席用エアコン吹き出し口の設定や後席用USB電源ジャックが2個、後席用シートヒーター、後席窓用サンシェードブラインドなどフル装備だ。
リヤトランクは奥行きが大きく容量もクラストップと大きい。さらに長尺物積載用に後席シートバックを倒しトランクスルーができる。
ただ唯一残念なのはこの後席可倒シートバックが分割式でなく一体で全部可倒してしまうことだけだ。北米仕様には分割可倒式シートバックの設定があるとのことなので、是非国内仕様にも設定してもらいたい。
車体の製造には構造用接着材を多用し、剛性を高めつつ軽量化。またHVバッテリーやインテリジェントパワーユニット(IPU)をフロア下に配置するなど低重心化にも大きく貢献させている。その結果着座時のヒップポジションも25mm低くなり、車高の高いSUVにばかり乗り馴れた身体には新鮮さが伝わってきた。
新型アコードはタイ国で生産され日本に輸入されるという。そのためスイッチの操作感やプラスティック部品の仕上げなど細かな部分には改善を望みたい点もある。はたしてシビックやレジェンドに変わりアコードが国内工場でも生産されるようになるには国内市場で大きな販売台数を稼ぎ出す必要がある。SUV一辺倒のユーザー心理に新鮮な刺激を与えることができるかどうかがカギとなりそうだ。