MTの電気自動車を実際に作ってみたら楽しかった!
平均的なEVとして日産リーフで見るとモーターの回転数9000回転で130km/hの巡航を可能としている。しかし、欧州の、とりわけ独・アウトバーンのような高速社会にも迎合されるには実用最高速度の向上は不可避と考えられ、200km/h巡航も可能とする超高回転型モーターの開発も始まっている。
米・テスラ社のモデルSはモーターの最高回転数が16300回転まで高まり、リダクションギヤ(減速歯車)を組み込んで最高速度200km/hオーバーを可能としているのだ。またEVではないがホンダNSXの前輪駆動モーターも15000回転まで回せるように進化し、200km/hまで駆動力が得られるようになるなど高速化に対応し始めている。
このようにメーカー各社はモーターを高回転化することで車速レンジを高めていっているのだが、それには極めて高度なモーター開発力が求められる。トランスミッションを増設することは、コストだけでなく重量やスペース効率も悪化するので、モーター自体の性能向上で対応しようとしているわけだ。
だが、じつはEVはトランスミッションを搭載しても成立する。僕自身かつてトランスミッションを装備したEVを製作したことがある。1977年式の旧型VW(フォルクスワーゲン)ビートルをベースにエンジンを降ろし、そこにベルトコンベアなどに使われる工業用の低回転型モーターを搭載。クラッチを介してMTを連結し走らせてみたのだ。
工業用モーターなので最高回転速度は3〜4000回転程度。ゼロ回転から最大トルクが引き出せるのは電動モーターとして必然だが、幅広い車速レンジでスムースに走らせるには変速機が必要だった。ビートルは3ペダルの4速MT仕様。大トルクが引き出せるので平坦路では4速発進も可能だが、登り勾配では1速から丁寧にシフトアップして加速させるほうが効率がよい。
そして4000回転で4速に入れると160km/hで走行できた。いわゆるコンバートEVだったのだが、オリジナルの空冷フラット4ガソリンエンジン搭載時には最高速度110km/hだったのがEV化で160km/hも出たので驚いた。この経験からモーターにコストかけるより安価な一定速のモーターにMTを組み合わせて走らせることも面白いと思ったものだ。
環境、モビリティ社会、人に優しいなどの従来的な思考回路でなく、電費を気にせずドライビングを楽しむという視点を重視するならMTのEVも大いにありえる。大手自動車メーカーではなくても、コンバートEVを手がける技術があればポルシェ911のMT・EVもすぐにできるのだ。
リッター2〜3kmの極悪燃費だがハイパワーを発揮するマッスルカーを好む人がいるように、EVだってドライビングを楽しめるモデルがあってもいい。MTのEVが登場する理由はゼロではないのだ。