賛否両論のブーレイデザインが登場
8)ランサーエボリューションVIII
2003年発売の、いわゆる「ブーレイ顔」はクルマとしての洗練度や質感が高まった印象がとても強い。乗り心地も比較的しなやか。当時のWRX(2代目の涙目前期)の標準車は足がガチガチ路線のままだったので、エボVIIIには大人っぽさを感じた。高速域や限界領域での安定感は凄まじく高く、「スーパーAYC」に進化したハイテク四駆は旋回フィールがさらに自然な感覚に。2004年発売の「MR」ではビルシュタインダンパーを採用するなど、洗練度の高さにさらに拍車がかかる。新車情報誌の編集部員として様々な場面で試乗したが、当時のWRXの標準車(2代目の涙目後期)よりも総合力は上だと感じていた。
9)ランサーエボリューションⅨ
2005年発売。可変バルタイ機構付きの4G63は持ち前の豊かな低速トルクがさらに厚くなり、3000回転以下でのトルク感は排気量アップしたかのような印象。WRCではスバルも三菱ともに往時の勢いはなく、もはや信号待ちで横に並んでもオーナー同士が火花を散らすようなことはほとんどなくなっていた。WRXもランエボも、いろんな意味で昔とは違うクルマになりつつあることを実感。
WRCではWRカーに移行してから三菱は急激に失速し、2002年シーズンにはあのトミ・マキネンがなんとスバルチーム入り。プロ野球で例えると阪神に原辰徳がやってきたような違和感があったが、マシン開発がグダグダに陥るなか、マキネンはペター・ソルベルグのサポート役としても貢献。ペターのドライバーズチャンピオン獲得を後押しする。
10)ランサーエボリューションX
2007年秋、3代目WRX STIとほぼ同時期に登場。ベースはギャランフォルティスに変わり、搭載エンジンも4G63ではなくなるなど、大変革を遂げる。デュアルクラッチ式2ペダルも採用。WRXとのライバル関係は一応続いたが、最高出力などスペックを競い合うような雰囲気はなくなり、スバルも2008年にはWRC参戦を終了。
最後のランエボとなったが、MT車は2015年の夏まで生産され、意外にも歴代最長ライフの長寿モデルとなった。エンジンの低速トルクが武器となるダートトライヤルではWRXよりも圧倒的に参戦数が多く、クラスによってはランエボのワンメイク状態になるなど、今でも一部のモータースポーツの現場で重宝されている。いつかまた、スバルと三菱のスポーツモデルが市販車と国際競技の両方で戦い、切磋琢磨しあえる状況が再現されることを願ってやまない。