開発リソースを駆動系に費やし進化を遂げたモデルも存在!
4)トヨタ・スープラ(1JZ-GTE/2JZ-GTE)
トヨタを代表するスポーツカーといえば「スープラ」。現行モデルでもフラッグシップには直列6気筒エンジンを積んでいるが、280馬力規制の時代に生まれたスープラは、直列6気筒専用マシンという位置づけだった。そのスープラが初めて280馬力に達したのはA70型と呼ばれる3代目モデルのモデル後半。1990年のマイナーチェンジで2.5リッター直列6気筒ツインターボ「1JZ-GTE」エンジンを搭載したときだった。
そして1993年のフルモデルチェンジでA80型になると、その心臓には3.0リッター直列6気筒ツインターボ「2JZ-GTE」が与えられた(NA仕様の設定もあった)。
カタログスペックは280馬力にとどまっていたが、2JZ-GTEのポテンシャルは1000馬力級という伝説めいた話は、映画『ワイルドスピード』により世間一般に知られるようになった。280馬力規制さえなければ、このスープラがどこまでパワーアップしていたのだろうか。
5)三菱ランサーエボリューション(4G63)
1992年にWRC(世界ラリー選手権)用のホモロゲーションモデルとして誕生したランサーエボリューション。そのフロントには、世界最強の4気筒エンジンとさえ称された2リッター直列4気筒ターボ「4G63」エンジンが積まれていた。デビュー当初は250馬力だったが、毎年のように進化していくなか、1996年エボIVになった際に規制値である280馬力に到達。
その後は規制値ギリギリのエンジン特性も磨きつつ、ACD(アクティブセンターデフ)やAYC(アクティブヨーコントロール)といった駆動制御技術を高めていった。それがランサーエボリューションの個性となり、さらに三菱自動車全体のキーテクノロジーとなっていった。現在のS-AWC(スーパーオールホイールコントロール)につながっている。WRCという舞台で求められた技術ではあるが、馬力規制がなかったら開発リソースをこれほど駆動系に振り向けたかどうか……。
6)スバル・インプレッサWRX STi(EJ20)
ランサーエボリューションの好敵手として、国内外のモータースポーツシーンでしのぎを削ったのが、インプレッサWRX STi(この時代は「i」は小文字だった)で決まりだ。
240馬力の2リッター水平対向4気筒「EJ20」エンジンを積むWRXグレードをベースに、モータースポーツ部門であるスバルテクニカインターナショナルが手掛けたモデルが「WRX STi」という位置づけで、後にカタログモデルになってからもSTiの知見が入ったモデルとして、エンジン、駆動系を進化させていった。
しかし、ここで注目したいのはSTiによるコンプリートカー。まだまだ280馬力規制下の2000年に誕生した「S201」は300馬力を実現。2代目インプレッサWRXをベースとして2002年に生まれた「S202」においては320馬力まで達していた。量産モデルではないが、規制の壁を越えた国産車として記憶に残る。さらに、このEJ20エンジンは超長寿ユニットで、1989年から2019年まで30年にわたり新車に搭載され、ブラッシュアップを続けてきたという点からも280馬力規制の時代が育てた名機といえる。