レバータイプや足踏み式の駐車ブレーキも少数派になるだろう
さて、かつての廉価モデルといえば、「クルクルウインドウ」や「ハンドパワーウインドウ」と呼ばれる、「レギュレーターハンドル」を使い手動によってサイドウインドウを上げ下げするタイプが主流だった。こちらも、いまでは商用車くらいでしか見なくなった。ほとんどの乗用車で電動パワーウインドウが標準装備となったのは、ユーザーニーズだけではなかったりする。
エアコンで触れたのと同様、どちらのタイプも用意するとなると、ドアの内装材などのデザインを2パターン用意しないといけなくなる。さらにいえば、内部パーツについても別設計となる。軽量化のために全車でレギュレーターハンドルタイプとするならまだしも、両方用意するのはコストアップ要因になってしまうのだ。
というわけで、「クルクルウインドウ」はもはや見たことがないというドライバーのほうが多いのでは? といえるほど珍しい装備となっている。ロータスのモデルのような超軽量を目指すスポーツカーでは生き残っていることもあるが、通常の乗用車でローコストのために選ぶということはほとんど考えにくい状況だ。
同様に、近い将来見なくなるであろうと思われるのが、ハンドレバーで操作するパーキングブレーキだ。パーキングブレーキのかけ忘れやリリース忘れを防いでくれるEPB(電動パーキングブレーキ)は、いまや軽自動車でも標準装備されているモデルが増えてきた。
先進運転支援システムとの相性を考えても、EPBは必須といえる機能であり、標準装備化が進むことが予想されている。そうなったとき、廉価グレードにハンドレバーやフットペダルを使うパーキングブレーキを用意することは、設計や生産性からコストアップ要因となると考えられるからだ。
後輪の荷重を抜いた状態で、ハンドレバーでパーキングブレーキをかけて一気に向きを変える「サイドターン」は、スポーツドライビングのテクニックとして知られている。ドリフトでもハンドレバーでパーキングブレーキを作動させることをきっかけにリヤを流すというテクニックは基本だ。EPBの標準化が進んでいくと、そうしたドラテクも“ロストテクノロジー”として失われていくのかもしれない。