ブランドアイコンとして採用しているが機能していないものも
クルマのスタイリングを評価するときに「機能美」という表現を使うことがある。必然性のある形状が生み出す美しさを示す言葉だ。伝統的なブランドやモデルでは、そうした機能美が伝統となり、アイコンとなっていくことも珍しくない。
たとえば、BMWブランドの象徴といえる「キドニーグリル」はふたつのグリルが並んだもので、その奥に高性能エンジンが存在していることを感じさせるアイコンとなっている。とはいえ、電動車両のBMW iシリーズではキドニーグリルが完全にダミーになっていることもあるし、またエンジン車でもキドニーグリルの部分が完全にグリルになっていないケースも増えてきている。
なぜなら、いまどきのクルマにおいては「とにかく冷やせばいい」というわけではなく、抵抗にならないようにうまく空気を取り込むことが重要で、その際における最適な開口位置とスタイリングでバランスされるグリル位置に齟齬が生じている傾向にあるからだ。これはBMWに限った話ではない。もともとは機能美として定着したグリルというブランドアイコンも、機能的にはダミーとなりつつあったりするのが現在だ。