人間は無意識のうちに荷重移動をしている
走り好きのカーマニアなら「荷重移動」というワードに関心を持ったことがあるだろう。荷重移動を意識してドライビングすることはスポーツドライビングの鉄則であるばかりかクルマやタイヤの性能を引き出す上でも、また開発やレースなどあらゆる場面で重要なキーとなる。
一般の人でも荷重移動を意識した運転ができれば適切な状況の判断や対応、安全運転にも繋がりメリットは大きい。
「荷重移動」は物理用語的だ。高校生の物理の教科書にも出てくる「荷重」という文字から「重さ」と思っている人が多いが、物理学的には「力」として解釈する。クルマという物体は静止時にも地球の重力に引っ張られ、地面(鉛直)方向に車体重量分の荷重が掛かっている。その大きさは質量(車重)×重力で単位はkgfで示される。というようなことを話しているとどんどん混乱してわかりにくくなってくるだろう。
だから単純のタイヤに掛かる重さを意識すると便宜的に考えるとわかりやすい。たとえば体重60kgの人が両足で立っているとき、片足に30kgずつの荷重が掛かっていることは無意識に感じられる。そこで前に歩き出すために左足を上げると、右足に全荷重の60kgがかかってくる。左足が負担していた荷重が右足に「移動」したわけだ。
しかしこれがマネキンなら、片足を持ち上げたところで倒れてしまうだろう。人間は倒れないように重心位置を移動させ、右足に鉛直荷重がかかるように調整している。このように重心の位置を意識し荷重のバランスを取ることが歩行では重要で、ロボットの制御では難しい部分ともいえる。