パワーは「仕事率」を表す!
具体的には1kg(キログラム=質量)の重さが1m移動したときに仕事をしたといえる。どんなに筋肉を持っていても、ある重さのモノを持ち上げたりして初めて仕事をしたことになる。単純に1kgの質量を1m動かすのが仕事だが、その仕事は時間を決めていない。何秒かかっても仕事をしたことになる。ところが、実際は10秒で動かすとどうなるのか。仕事を時間で割ると仕事の効率、つまり仕事率がわかる。これがパワーであり単位はW(ワット)と書く。
ここまでをまとめると:力→仕事→仕事率。
この仕事率の単位「W(ワット)」は絶対に覚えておきたい。
それではW(ワット)と馬力(PS)の関係はどうなのか。馬力という言葉が生まれたのは、蒸気機関が考案され大昔のこと。蒸気機関の仕事を馬に換算してみると、一頭の馬の仕事率がだいたい740Wとなった。そこで100馬力のエンジンはWに換算すると
740W x 100馬力 =74000W=74KW
となる。台所にある電化製品は500Wから1500Wのものが多いことを考えると、いかにエンジンが大きな出力(パワー)を発揮するか理解できる。
ここまで仕事率について説明してきたが、仕事のなかでも、エンジンのようにクランクシャフトが回転する場合はあえてトルクと呼ぶ。イメージ的には1kgの重さのオモリにロープを結び、貨車を介してこのオモリを1m持ち上げたときの貨車を回す仕事をトルクと呼ぶ。この場合以下となる。
1kg x 1m = 1kg・m
しかし、1kgの重さは地球上のことで、同じオモリを月で持ち上げると6分の1になる。そこで地球の重力加速度(9.8m/s²)を考慮する必要があるから、1kg・mに重力を掛けると9.8となる。単位はN(ニュートン)となる。
つまり、1kgの重さを1m持ち上げるときの滑車の回転力「1kg・m」は地球上では「9.8Nm」となる。約10N(ニュートン)と理解しておくと、トルク20Kg・mのエンジンは約200Nmと理解できる。
クルマのカタログを見るときのポイントは、パワーは仕事率なので単位時間の仕事の効率(速さ)を意味し、トルクはクランクシャフトの回転する仕事だということだ。
最後にエネルギーについて説明しよう。これはズバリ、仕事をすることのできる能力のことを指す。エンジンの場合はガソリンが燃えるときのエネルギーであるが、これは化学的な燃焼という反応で生じるので、エネルギーはガソリンに内蔵されていると考えることができる。
順番に書くとこうなる。
エネルギー→力(フォース)→仕事(トルク)→仕事率(ワット)
R35型日産GT-Rを例に出すと、ガソリンは膨大なエネルギーを持っているし、それをターボエンジンで燃焼させると大きな力を発生する。で、実際に走ってみるとその仕事(トルク)の大きさに驚くが、単位時間の仕事の効率(パワー)が優れているので、筑波サーキットを1分以下で走り切ることができるのだ。