すべては乗員の快適な移動のために! トヨタ・グランエースのメカニズムに迫る (2/3ページ)

CHASSIS 上質な乗り心地とハイレベルな走行安定性を実現

 全長5.3m、車重約2.8トンという大柄なボディを支え、そのうえで操縦安定性や乗り心地を追求するべく、グランエースのサスペンションは専用設計となっている。サスペンションは、フロントにマクファーソンストラット、リヤにトレーリングリンク車軸式を採用。

 マクファーソンストラットは、国内最大級となるサイズだが、それは車重を支えるとともに、操舵時の応答性や一体感、ステアリングシステム全体の剛性を高めるためだ。フロントサスペンション全体としては、FR車のメリットを最大限活用し、素性のいい配置にこだわった。

 キャスター角は、ハンドルを大きく切ったときに必要となる操舵力と直進性を両立できる最適値に設定し、ロアアームの取り付け位置(ボディ側/車輪側)の最適化によって、ロールセンター高を上げて、積載時(多人数乗車時)でもロール量の増大を抑え、操舵応答性を高めた。そして、このロアアームボールジョイント位置に対し、ステアリング機構のタイロッドボールジョイントを極力車両外側に配置することで、タイヤ切れ角アップとハンドル戻り性能を両立。またロールセンター高アップに伴うキングピンオフセット増大に対応すべく、ホイール中心を内側にセットしている。

 リヤサスペンションは、後席の乗り心地と操縦安定性を両立させることができるトレーリングリンク車軸式を採用。後車軸が収まるアクスルハウジングから、左右それぞれ2本のリンク(アーム)を前方に伸ばし、ボディと連結する形式のサスペンションだ。フロア高を下げるために、コイルスプリングとショックアブソーバーを別置きとして、コイルスプリングをロアコントロールアームの真上に配置し、その外側にショックアブソーバーを配置している。

 リヤサスペンション開発において、もっともこだわったのは後席乗員の快適性だ。日本国内よりも道路事情が悪い地域での使用も想定した設計のため、サスペンションストロークは十分に確保。さらに国内専用のアイテムとして、路面からの入力振動の周波数に応じて減衰特性が変化する、周波数感応型ショックアブソーバーを採用している。

 操縦安定性向上のためには、ドライバーの操作性も重要なポイントだ。車体の大きな車両では、取りまわし性とドライバーの操作に対する車両の応答性が悪化する傾向にある。グランエースでは、車体の大きさを感じさせない操作性を実現するため、最小回転半径を5.6mに設定しており、タイヤの切れ角を大きく(最大45度)取ることでそれを実現している。

 フロントのマクファーソンストラットの大型化に合わせて、パワーステアリングシステムもラック&ピニオン式としては国内最大級サイズとした。車重の大きさとタイヤ切れ角が大きいため、ステアリング機構自体のパワーが必要だったのだ。また、操舵フィーリング向上のためステアリングシャフトも大径タイプとし、さらに極力直線的なシャフトレイアウトに。路面からの入力による不快な振動を遮断するため、ジョイント部分にも新機構のカップリングを採用している。ステアリング機構はコラプシブル構造で、チルト&テレスコピック調整機構を備えている。

 そのほか操作系では、ステアリングとアクセルおよびブレーキペダル、シフトレバーの位置関係を最適化。ドライバーの左膝まわりのスペースを確保し、なおかつ左右席間のスムーズなウォークスルーも可能にしている。

 多人数乗車や多積載が前提のクルマなら、ブレーキ性能も高めておかなければならない。ブレーキシステムは、フロント、リヤともに16インチの大径ディスクとし、フロントには2ピストンキャリパーを採用。また、倍力装置の容量も拡大し8インチ+9インチのタンデムブースターを組み合わせている。さらに、軽いペダルタッチと剛性感を両立させるため、ペダル比を可変としたリンク式ブレーキペダルを採用している。同時にペダル高さやペダル角、踏み込み角も最適化した。


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