老化を自覚したらどうする? 高齢者のクルマの選びのポイントと運転での注意点 (2/2ページ)

ペダル操作を確実に行うには運転姿勢をあらためて見直そう

 老眼や老化はまた、目の焦点が合いにくいだけでなく、状況を理解し、判断するのにも時間を要するようになる。焦点調整や、距離感の認識に遅れが生じるためだが、状況確認には時間を取って、しっかり確認したうえで次の運転操作に入ることを意識しているとよい。ことに、一時停止は、ひと呼吸分停車するくらい確実に止まって、左右やほかの交通の有無の確認をしっかり行うべきだろう。

 そのひと呼吸の時間は、はじめのうちは長く感じるかもしれない。しかし、ほんの数秒のことだ。一方それを怠って事故を起こせば、何時間もその対処のため費やすことになる。それを思えば、ひと呼吸分の安全確認は有効といえるだろう。

 同じことは、クルマに乗り込んで発進するとき、あるいは駐車などで後退をする際も、ひと呼吸分の安全確認や、操作の確認をしたうえで行動に移す意識が大切だ。

 ペダル踏み間違い事故でよく語られる理由に「慌てていたので」という言い訳がある。いくら急いでいても、ひと呼吸の安全確認を忘れなければ事故を防ぐことができたのではないか。

 より的確な運転操作を行うには、正しい運転姿勢をとることが重要だ。

 正しい運転姿勢は、まず、座席の背もたれの付け根まで、腰を奥へ押し付けるようにして座る。次に、ブレーキペダルを床まで一杯に踏み込んで、膝が伸び切らない位置に座席の前後調整を合わせる。そして、ハンドルの頂点を両手で持ち、両肘が伸び切らないようゆとりをのこせる角度に背もたれを合わせる。このとき、座席の高さ調整機構や、ハンドルの前後調整機能であるテレスコピック機構を活用すると、すべての位置関係を自分の体に合うよう調整できる。

 正しい運転姿勢をとると、これまで馴染んできた姿勢と違和感を覚えるかもしれない。しかし、これを機会に改めて運転姿勢を正しておかないと、老眼を感じはじめたところから、体の関節の曲がりにくさや、足のあがりにくさ、手の回しにくさという身体的老化が自覚しないうちに起こりはじめている可能性があるので、従来どおりの運転操作ができていない可能性が生じる。これといった段差もないのに躓いた経験があれば、もうそれは身体的老化のはじまりだ。

 無意識にできていたことを、意識しなければならないのが老化だ。老眼を実感したら、運転操作も意識して行う年齢に達したのだと思うといいだろう。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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