安全装備が追加された最新モデルでも1100kg台と車重が軽い
さらに、商用車は車重がとても軽い。耐久性を高めるための補強はなされているものの、乗員のためのコンフォート性は軽視されているので室内装備は大幅に簡素化されている。そのため、たとえばプロボックスではFFの5速MTの車重はわずか1030kgと、初代ロードスター並みに軽い。安全装備が追加されたハイブリッド仕様の最新モデルでも1100kg台だ。
そして、パワートレインも特徴的。エンジンはピークパワーこそ低いものの、低速トルク重視型。さらにミッションのギヤ比は基本ローギヤードなので、軽い車重と相まって、空荷では活発な加速性能を発揮できるというわけである。
さらに言えば、商用車のドライバーは基本的に時間に追われていることが多いという事情も、高速道路をカッ飛ばす傾向が強まっているようだ。
2002年にデビュー直後のプロボックス(Fエクストラパッケージ/FF/5MT)を新車で購入し、18年間で約84万kmを走破。今もなお乗りつづけているカメラマンの古閑章郎氏によると、商用車は車重の軽さに加え、メカニズム的にシンプルであることが長年にわたり速めのペースで巡航できるポイントだと語る。空力特性はあまり良くないので、速度が高まるとフロント部分のリフト感が強まり、高速域での安定性が高いとは言えない状況に陥るも、ある程度荷物を積んでいれば荷重によりリヤの安定性は確保されるので、危険を感じさせる挙動にはならないのも美点だという。
タイヤ幅は細いので限界は低い反面、限界に近づきつつある状況でも極端なアンダー/オーバーステアは顔を出さないという。徹頭徹尾安定志向が破綻しないことも、長く乗り続けられるポイントになっているようだ。
ちなみに古閑氏のプロボックスは、サスペンションはTRD製に交換したものの、基本的にはノーマル状態。エンジンは約30万kmごとに寿命が訪れ、これまで2機のリビルド品に交換。ミッションはいまだに無交換(クラッチは2度ほど交換)というから、耐久性の高さは驚異的だ。商用車の速さとタフさ、おそるべしである。
年間の走行距離が極端に多く(年間4万km以上)、1台の車に長く乗り続けたい人は商用車をプライベートカーに選ぶのも悪くない。