コスト削減に繋がることも! 自動車メーカーが「別グルマ」かのようなビッグマイナーチェンジを行う複雑な事情 (1/2ページ)

売れているからこそコストをかけてマイナーチェンジができる

 年次改良、商品改良……呼び方はいろいろあるが、多くの量産車は1~2年に1回程度のペースでマイナーチェンジを繰り返している。なかでもバンパー形状をまるっきり変えてしまったり、パワーユニットを大幅に変更したりといった改良が施されたときは「ビッグマイナーチェンジ」と呼ぶことがある。

 大きく変えるということは、初期のスタイリングやメカニズムの否定といった印象を受けることもある。つまり「売れていないからビッグマイナーチェンジをしたんだ」と考えてしまう。たしかに、そうしたケースはあるだろう。

 ただし、ビッグマイナーチェンジをできるということはそれだけコストがかかるわけで、企業としてお金をかける価値があると認めたモデルでしかできないことでもある。さらにいえばマイナーチェンジにしても、その開発には時間がかかる。商品計画としてマイナーチェンジにかける予算を確保できるのは、やはり売れているカテゴリーのモデルに限られる。

 最近でいえば2020年3月に欧州で発表されたメルセデス・ベンツEクラスのビッグマイナーチェンジは、まさしく売れているモデルだからこそできる大変身である。ほぼフルモデルチェンジにも思えるほどの変身ぶりだが、これによってフルモデルチェンジ相当の新車効果や商品力アップが認められるのであれば、メーカー的にはおいしい話だ。プラットフォームレベルから一新するよりは、ずっと開発コストを抑えることができるからだ。

 一方で、小さなマーケットを狙っているようなクルマではビッグマイナーチェンジを果たすことが予算的に厳しい。こちらも具体例をあげると、2020年1月に発表されたホンダS660のマイナーチェンジはなにが変わったのかマニアでなければわからないほど。パッと見ではウインカーがフェンダーからドアミラー内蔵タイプに変わったこと、アルミホイールの意匠が変更されたことくらいで、イメージはそのままだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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