速さを追求した「A110S」が新たに加わった
「アルピーヌA110」にもっとも攻撃的な「A110S」が加わった。そう聞かされて向かった筑波サーキットで我々を待っていたマシンは、いかにもクルマ好きの琴線を震わせるに十分なオーラを発散させていた。
A110はこれまで2タイプの仕様をラインアップし、アルピーヌブランドを形成していた。いわば軽量で且つ安価な「A110ピュア」と、装備を充実させた「A110リネージ」との二本柱で展開してきたのだ。そこに速さを追求した「A110S」が加わったというわけである。
走りを意識した仕様の誕生は、これまでも期待されていた。もともとがミッドシップレイアウトであり、1.8リッターのターボエンジンを搭載していた。外観からの印象からも想像できるように、地を這うような低い姿勢は低重心であろうことを想像させたし、実際にスポーティ性能は際立っていた。
そもそもアルピーヌは、かつてのモンテカルロ覇者のオマージュであり、DNAを色濃く受け継いでいる。走りの血統はサラブレッドある。シンプルな「A110ピュア」と、豪華装備の「A110リネージ」だけでは構成が物足りない。サーキットを意識したモデルの登場は、誰もが待ち焦がれていたのである。だから「待望の……」という言葉を添えたくなる。
今回の主役「A110S」の外観をクルリと見渡すと、ピュアやリネージとの違いがあらわになる。まず、車高の低さが目に飛び込んでくる。同時にタイヤサイズも拡大されていることがわかるのだ。
インテリアも同様にスペシャルな設えが確認できる。随所にオレンジ色を配色することで差別化をはかっているのだ。ステアリング上端にクルリと巻かれたオレンジのリングは、ラリー覇者の名残りである。
ハンドルを高速で回転させることが多いラリーでは、ひと目でセンターがわかるように、帯を巻くのを好む。助手席の足もとには、ひときわ目につく大盤のアルミフットレストが組み込まれていた。これもコ・ドライバーのための配慮である。というように、アルピーヌは細部にわたってモータースポーツの息吹が感じる。しかもそれがサーキット系ではなくラリー系であるのが特徴だ。