マーチが置き去りなのは日産が国内市場を大切に考えていないから
キューブの発売は2008年、マーチも2010年だから基本設計が古い。この2車種をほとんど改良せずに放置してきたのは、最近の日産が日本国内を将来性の乏しい市場だと見限っているからだ。とくにリーマンショックによる経済不況の影響で、2011年以降の日産は新型車の国内発売を滞らせた。新型車は1〜2年に1車種しか登場していない。
そのために2019年の日産車の売れ行きを見ると、デイズ+デイズルークス+ノート+セレナの4車種で国内で売られた日産車の65%を占めてしまう。一部の車種だけが日産の国内販売を支えている。
このような状態だから、今の日産の国内メーカー別販売ランキングはトヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに次ぐ5位だ。日産の世界販売台数に占める国内比率も、軽自動車を含めて11%に下がり(トヨタは18%)、国内は従属的な市場になった。国内市場は売れ行きが下がって儲からない市場と判断され、そのために新型車の発売も滞り、売れ行きがさらに下がる悪循環に陥っている。
いい換えれば、国内市場は「先に挙げたデイズやセレナなどの4車種で、食い繋いでくれ」ということだ。そしてキューブは国内向けのため生産を終わり、マーチはノートと併せてアジア地域でも売られることもありマイナーチェンジを実施する。日本でコンパクトカーの人気が高いから、マーチを改良するわけではない。
結論をいうと、ヤリスやフィットが新型車になっているのに、日産のコンパクトカーが放置される理由は日産が国内市場を大切に考えていないからだ。
ただし今後は、ジュークの後継車種としてキックスが導入される。2019年の東京モーターショーに出展された電気自動車のアリア、Imkの市販版もデビューしそうだ。日本では総世帯数の約40%が集合住宅に住み、充電設備を持ちにくいから電気自動車に偏った商品開発は危ういが、今後の新型車投入に期待したい。
日産の世界販売の90%を占める海外向けの車種も、開発しているのは日本人の社員だ。日本国内で日産が輝きを失うと、やがて海外市場でも商品力と業績を下げてしまう。日産が流れを変えるなら、今が最後のチャンスだ。