ガソリンモデルは力強い加速が素晴らしいが静粛性が今ひとつ
トヨタ自動車の新型ヤリスにいよいよ一般道で試乗する機会を得た。昨年11月にプロトタイプモデルを袖ヶ浦フォレストレースウェイにてテストドライブさせてもらったが、その時のロードホールディングに優れたハンドリングの良さが生産モデルにきちんと再現されているのかが着目点だ。
まず1.5リッターのガソリン仕様を試す。外観はツートーンに飾られスポーティな雰囲気だ。室内はプラスティッキーな仕上がりでダッシュボード中央に配された8インチの大型液晶モニターがやや視界を遮っている。モニター自体の視認性はいいのだが斜め前方に死角が生じるので注意が必要だ。
前列左右席にはシートヒーターが備えられ冬場の快適性を高めているのは嬉しい。
シフトレバーはIパターンでP—R—N—D—Bと走行モードが配された物理レバーを採用。極めて一般的なシフトパターンにより、初めて乗る人でも戸惑うことなく操作できる。
エンジンを始動すると3気筒らしいサウンドと振動を発する。このエンジンは新開発のダイナミックフォースエンジンで直噴の燃焼方式D-4を採用している。エンジン型式名はM15A-FXS型とされ、同じエンジンながら仕様の異なるハイブリッドシステムのエンジンとは差別化されているのだ。
トランスミッションはダイレクトシフト-CVTで発進ギヤが組み込まれているのが特徴だ。
走り始めると、この発進ギヤにより力強く加速していける。登り坂の発進でもパワー不足を感じないし、急加速が必要な場面でも強力にパワーを引き出してくれる。高速道路での合流などをアクセル全開で加速すれば50〜60km/hでCVTに引継がれ車速を増していける。ダイナミックフォースエンジンは6000rpm以上の高回転域でもトルクの落ち込みが少なくパワフルでパンチがあった。
残念なのはエンジン音やロードノイズの遮音性が低く加速場面では総じてノイジーであったことだ。一定速度のクルージングではノイズが収まるので加速時とのギャップが気になるのだった。
ハンドリングは秀逸だった。ロードホールディングの良さは袖ヶ浦サーキットで感じたままで、路面のアンジュレーションにもしなやかに追従し乗り心地も良い。ライントレース性も正確。車重が軽くアジリティにも優れている。ステアリング系の剛性が高く操舵フィールも好印象だ。
サイドブレーキにレバー方式を採用しているのでサイドブレーキターンは行える(普通の人は試さないだろうが)一方、全車速追従のクルーズコントロールは備えられない。欧州仕様は電子制御パーキングブレーキを採用しているモデルがあるというので今後追加される可能性もないとは言えまい。