高齢者の自主返納によりクルマを処分したいという人が増えている
ただ、ここへきて新車販売不調の大きな要因になろうとしているものがある。それは“運転免許の自主返納”である。高齢ドライバーの運転操作ミスによる大きな交通事故が頻発し、世の中では高齢ドライバーが運転免許を自主的に返納することがクローズアップされている。
そもそもこれは、あくまで自主的なものであり、クルマの運転に自信がなくなった高齢ドライバーが自分の意思で運転免許を返納するものだが……。最近の様子を見ると行政も積極姿勢を見せることもあり、一定年齢に達すると「私もそろそろ」とばかりに、周囲の目も気にして返納するケースも目立つようだ。家族のすすめもあって返納するケースもあるようだが、このケースでは、家族が断絶しそうなほど揉めることも珍しくないと聞く。
新車販売業界に詳しいひとによると、「運転免許を返納したあとは、“はりあい”がなくなるのでしょうか、体調を崩されるひとや、ひどい時には認知症になってしまうといった話も販売現場では聞いたことがあります」とのことであった。
販売現場で話を聞くと、高齢の管理ユーザーが運転免許の自主返納により、マイカーを処分するケースが目立ち、これが新車販売に結構手痛いダメージを与えてきているというのだ。
「いままでお付き合いのあるお客様へ、新車への代替えをすすめる活動が非常に大事なのですが、新車への代替えをおすすめする前に、運転免許を返納されてクルマを処分したいというお客様が多くて商売にならないケースが多く、これが結構頭痛の種となっています」とは、現場のセールスマン。
しかも、影響は新車販売だけに留まらず、マイカーを処分するので車検誘致活動にも影響が出ているとのこと。「運転免許の自主返納によりマイカーを処分されるお客様が目立つので、車検誘致に関しても既納客へのアプローチをメインにしていては、とてもではないですが目標誘致台数には足りません。いまではメーカーにこだわらず飛び込みのお客様も積極的に取り込もうとしています」(前出セールスマン)。
「新車が売れなくなるから、いつまでもクルマを運転していてもらいたい」ということをいうつもりはない。ただ、新たな新車販売不振要因として運転免許の自主返納というものが目立ってきているのは間違いないようだ。
若年層がマイカーどころか、運転免許すら持っていないひとが多い時代なので、新規に新車を購入してくれるひとより、クルマの所有をやめるひとのほうがはるかに多くなっているのが現状。一部メーカーがシェアリングやサブスクリプションなど、新しいカーライフの提案を積極化しているのは、クルマを売るだけではやっていけない、販売現場の切実な事情があるのだ。