バス運転者の強烈なバス愛とタクシードライバーの割り切り感! 同じ二種免許運転士でも違う気質とは (2/2ページ)

日々乗客を安心・安全に目的地まで運ぶ職人のプライドの高さ

 まずはバス乗務員。バスが大好きでバスの乗務員になるために大型二種免許を取得し従事するひとが、ベテラン乗務員ほど目立つとのこと。その“バス愛”はハンパなものではない。バス事業者によって異なるのだが、“専用車両”として決まった車両の運転に専従してもらうという勤務パターンがある。こうなると、バスはもちろん会社が保有しているのだが「オレのバス」という感覚を持つ乗務員が多いようだ。常に車両はピカピカに磨き上げるだけでなく、運行に必要なステッカーを貼る時にも「そこは困る」とか「きちんと貼って欲しい」など強いこだわりがあるとのことである。

 バス好きが高じて乗務員になっているので、バスメーカーへのこだわりを持つ乗務員も多く「自分の好きなメーカーのバスを使っている」として就職を決める乗務員も珍しくないようである。さらに、やや古めながら自分のお気に入りの車種を扱っている事業者を渡り歩く乗務員もいると聞く。とにかく“バスが大好き”という乗務員が業界内ではまだまだ多数派となっているようだ。

 ただし、ここ最近は“世代間ギャップ”というものも目立っている。若い乗務員は仕事と割り切っているので“バス愛”は総じて薄いとされるし、ここのところ、とくに高速路線バスなどは“稼げる仕事”として注目されており、それを目当てに中途入社してくる乗務員も仕事として割り切っている乗務員が目立つようだ。

 一方のタクシー乗務員は“タクシー愛”を持って業界に入ってくるひとはかなりの少数派となっているようだ。バスは大型二種免許が必要だが、タクシーはすでに乗用車を運転できる一種免許を持っていれば、二種免許さえ取得すれば乗務員として働くことができる。バスよりはハードルが低いともいえるので、さまざまな理由からタクシー乗務員をめざすひとが多いこともあるようだ。

 車両にこだわりがあるといっても「AよりBのほうがシートは疲れにくい」といった実務面の話が中心となる。いまは都内ではJPNタクシーばかりになっており、選択の余地はなくなりつつあるが、少し前であっても「セドリックが好きだから」といって就職先を選ぶひとはまず見かけなかったとのこと。つまり、タクシー乗務員はバス乗務員と異なり“オタク”志向なひとはほとんどいなく、タクシードライバーという職業として割り切って日々乗務しているひとが多いのである。

 ただ共通点がないわけではない。バス、タクシー事業者へ装備品を販売している、ある業者いわく「現場の乗務員さんに、製品について説明し導入への理解を求めるということがよくあるのですが、そのときに『あんたはハンドル握ったことがあるのか』ということを乗務員さんからよく聞かれます。つまり、乗務経験があるのかということです」。

 タクシー会社の事務職として就職したときに、そこで働く乗務員から「どこでハンドル握っていたんだ」ということを聞かれたという話も聞いたことがある。バスやタクシー業界は実際に乗務経験がないと理解できない部分が多いのは確か。乗務経験があるかないかで、乗務員との距離に大きな差ができるというのは業界をよく知るひとの共通認識となっているように見えた。

 前述したように、乗務員の中でも世代間ギャップというものが目立ってきているものの、まだまだ“職人気質”の強い業種であるのは、バスもタクシーも間違いない。

 残念ながら以前よりは改善傾向にあるものの、けっして“高給取り”と呼べる仕事ではないし、諸外国のドライバーと比較しても収入はけっして高いとはいえない。そのなかで日々乗客を安心・安全に目的地まで運ぼうという職人としてのプライドの高さが、いまのバスやタクシー業界を支えているといっても過言ではないし、その部分も共通しているといっていいだろう。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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