開発段階で誰もが納得する居住性に仕上げている
クルマの乗用定員は軽自動車で4名、普通の乗用車で最大5名、3列シートのミニバンやSUVになると6~8名定員になる。そこで疑問がわくのが、クルマの開発で、走行性能を検証する際、何名乗車で行っているのか? ということ。
われわれがディーラーで試乗する時、乗車人数は本人+セールスマンの2名、または+家族1名の3名だったりするのだが、フル乗車して乗り味が大きく変わるようでは、購入後「こんなはずじゃなかった」ということにもなりかねない。
そこで、某自動車メーカーの開発で、動力性能、足回り、走行性能に携わっている開発者を直撃した。
もっとも気になるのはミニバンだが、2名乗車であれば重量増は約120kg。しかし、8人乗りでフル乗車すれば、約500kgも重くなる。果たしてそうした乗車まで想定して、走行性能をチェックしているのだろうか。
開発者によれば、ミニバンの場合、フル乗車と同じ人数のスタッフが運転席~助手席、2列目席、3列目席と乗り換えていき、それぞれの意見をまとめるのは当然だという。たとえば3列目席の居住性にAさんが満足しても、Bさんが不満であれば、その理由や原因を検証。誰もが納得できる居住性に仕上げていくようだ。もちろん、セダンやハッチバック、ワゴン、2列シートのSUVでも同じ。定員数と同じ人数のスタッフが座る位置を変えつつ、検証する。
が、ミニバンの3列目席に限って言えば、シートのがたつき、シートベルトの着用性などの構造上の欠陥にあたるチェックが主らしい。乗り心地や静粛性などについてはそれなりでも、コストなどの要件からすべてのユーザーが満足できるレベルにまで仕上げることは難しいケースもあるという。
衝撃的だったのは、走行性能についてはミニバンであろうと一例として2名乗車でのテストが基本という事実。それを適値としているのは、日本の乗用車の平均乗車人数が1.5人というデータに基づいていると考えれば、つじつまが合う。