ディーゼルの馬力が小さいのは回転数を高くできないため
ここで話は冒頭に戻って、馬力とは効率を表すとした。つまり、ある決められた時間内にどれだけこなせるかだ。したがって1分間に何回転できるかが、エンジンの馬力に関わる。回転数をあまり高くできないディーゼルエンジンは、結果的に馬力は小さくなるというわけだ。
荷物を運んだり、大勢の人を乗せたりするトラック/バス、あるいは船舶などでディーゼルエンジンが愛用されてきたのは、速く走るためではなく重い物を運ぶためだ。
それに対しガソリンエンジンは、トルクではディーゼルより小さいかもしれないが、軽く作れる分、高回転まで回すことができる。つまり大きな馬力を出せる。しかし低回転ではトルクが小さいので、瞬発力はディーゼルに劣る。
軽くアクセルペダルを踏み込んでも、発進でディーゼルエンジンが力強く走り出せるのはトルクが大きいからで、馬力ではない。ガソリンエンジンも、高回転まであらかじめ高めておいて発進すれば瞬発力を高められるが、普通に発進するなら飛び出すような瞬発力が出ないのはトルクが小さいためだ。
では、昨今のディーゼルターボエンジン乗用車はなぜ速く走れるのか。それは、圧縮比を下げて軽く作り、以前に比べ高回転まで回せるようにしたこと。それからターボチャージャーで過給して吸入空気量を増やしてトルクを補い、ガソリンエンジンより低い回転での馬力を上げて、ガソリンエンジンに近づけるようにしたからだ。