事故率を引き下げたり速く走るためにも活用できる装置だ
VSC、VDC、ESPなどメーカーによって名称は異なるが、タイヤの空転を防止するトラクションコントロールとABSを利用して四輪個別にブレーキを掛ける動きを統合制御する横滑り防止装置は、日本において乗用車では装着が義務化されていることもあり、当たり前の装備となっている。では横滑り防止装置の効果を改めて考えてみよう。
1)単独事故を起こす確率の劇的な軽減
オーバースピードでコーナーに進入した場合の効果は望めないが、とくに滑りやすい道でのアクセルの踏み過ぎや下り坂でブレーキを掛け過ぎてしまい、クルマの挙動が不安定になった際などに、横滑り防止装置はクルマを安定させてくれる絶大な効果を発揮する。
実際、横滑り防止装置が付いていると独立行政法人自動車事故対策機構は単独事故を約44%減少するというデータを発表しているほどだ。また横滑り防止装置は、こちらも最近では当たり前の装備となっている自動ブレーキを構成する重要なハードウェアの1つでもある。
2)速く走る、アクティブに走るための装備にもなる
初期の横滑り防止装置は介入のタイミングが非常に早かった。作動後はしばらくアクセル操作に対するレスポンスが一気に鈍くなり、ドライバーに介入したことを強く警告するなど、とにかく安全第一という性格のものがあったのは事実だ。
しかしこういったハイテク装備は、ABSもそうだが、「きめ細かい攻めた制御をする」というものであれば、別のメリットが見えてくるのだ。今回のテーマである横滑り防止装置も、トラクションコントロールがタイヤの性能の100%近いところでトラクションを制御する、ブレーキ制御もコーナーの内輪にだけ微妙にブレーキを掛け旋回性能を高めるといった、速く走るための武器にもなる。
また横滑り防止装置があるとその発展で、とくにSUVなどでは、「悪路で片輪が浮いてしまった」とか、「片側が凍結路、片側が舗装路」といったシーンで、横滑り防止装置を利用したLSD付きに近い効果を持つ走行モードを設けることもできる。
といった素晴らしい効果を持つ横滑り防止装置であるが、それならなぜオフスイッチがあるだろうか? と当然オフスイッチを設けるには理由がある。オフにしたほうがいい場合を挙げてみよう。