【ジュークもあるのになぜキックスなのか】日産が欧州で販売している「新型ジューク」を日本に導入しないワケ (2/2ページ)

キックスのほうが国内のニーズに合うという判断を下した!

「新型ジュークでは、エンジンやトランスミッションが従来型から大幅に変更され、日本国内のニーズに合わなくなりました。そこで国内で売るコンパクトSUVをキックスに変更するのです」とのことだ。

 欧州で売られる新型ジュークのエンジンは、直列3気筒1リッターターボで、トランスミッションは6速MTと7速ATになる。後者は2組のクラッチを使う有段式ATだ。

 これに比べるとキックスは、同じコンパクトサイズのSUVでありながら、北米仕様には直列4気筒1.6リッターNAエンジンを搭載している。トランスミッションもCVT(無段変速AT)を選べる。日本のユーザーには、直列3気筒1リッターターボに2組のクラッチを備えた有段ATを組み合わせるジュークより、キックスのほうが馴染みやすいと判断された。

 つまり国内で売りやすいとされるコンパクトSUVも、メーカーの商品開発は海外優先だ。そのために新型ジュークも、欧州指向を強めて日本を離れ、国内ではキックスを扱うことになった。海外向けに開発された商品のなかから、その都度、日本でも売れそうな車種を割り当てている。

 状況はほかのメーカーも同様だ。たとえば新型ホンダ・アコードは、日本では2020年2月21日に発売されたが、北米では2017年7月にフルモデルチェンジされていた。北米では2年半も前に導入されたのだから、日本で発売しても、もはや新型車とは呼べないだろう。

 スバル・レガシィも、北米では2019年7月に新型へフルモデルチェンジしながら、日本では今でも旧型を売っている。

 今はどの車種でも、新型になると、衝突安全性や安全装備が進化する。従って日本で従来型を売り続ければ、日本のユーザーには、海外よりも危険な商品を提供することになってしまう。そこを各メーカーともに、気にしていない様子だ。ジューク、アコード、レガシィには、日本車メーカーの日本のユーザーに対する姿勢が、とてもわかりやすく表現されている。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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