暴れ馬だが手懐ければ驚異的な速さを見せる!
だから、一般的には2速で旋回するのがセオリーの1コーナーを僕は3速で挑んでいる。低回転からモリモリとトルクが溢れ出す証拠である。
じつはそれは正解で、逆にいえば高回転域の伸びはない。レッドゾーン手前から徐々にサーチュレートしていくようで、シフトアップが急かされる。1.8リッターターボという排気量だから高回転でシュンシュン回ると予測するのは幻想で、むしろ下から使えるエンジンだったのだ。
実際のところ、6速マニュアルトランスミッションは2ペダルMTのような電光石火のシフトワークが不可能だ。クラッチペダルを踏み、床から生えているシフトレバーを器用に操るのは難しい。軽量化のために古典的なマニュアルミッションを採用したことは尊重するが、タイムロスはする。ならばわずかでもタイムロスの機会を減らすことが得策だと思えた。3速で1コーナーに挑んだのはそんな理由もあったのである。
操縦性に関しても、予想を裏切られている。メガーヌR.S.トロフィーRは徹底したダイエットに挑戦している。後輪操舵すらも省略している。それがアンダーステアで曲がらず、なおかつオーバーステアでロスを生むのではないかと想像していたものの、現実はそれとは異なり、コーナリングマナーは良い。フロントはメガーヌR.S.トロフィーよりも鋭く入る。ロール剛性が高く感じたのは、軽量化の恩恵だろうか。ノーズの応答はつねに残されている。
それでいて、テールスライドも軽微だ。ブレーキを軽く当てて進入するような、例えばダンロップコーナーであったり、最終コーナーなどではリヤがむず痒く限界を覗かせるが、過渡特性は感覚を裏切らないので次の挙動が予測しやすいのだ。
もっとも、暴れ馬であることに違いはない。パワーは強烈だから、タイトコーナー立ち上がりでは必ずといっていいほど前輪が空転する。コーナーを小さく曲りこみ、直線的なラインを描いていてさえも、アウト側の縁石に触れるあたりで必ず前輪がスキッドアウトする。この辺りは前輪駆動の限界なのかもしれない。超絶グリップのタイヤをはめこむか、もしくは丁寧に調律したトラクションコントロールが欠かせない。
いやはやそれにしても、激烈マシンである。自宅を早目に出て、走りを事前に観察したことで気持ち安らかにドライブすることはできたが、その想像を大幅に超えて過激だったのである。
ニュルブルクリンクでの最速に挑むということは、つまりそういうことである。