【市販車は登場しない可能性も】想像以上にハードルが高い家電メーカーが挑むクルマ作り (2/2ページ)

「自社でクルマをつくってみよう」という発想は自然なもの

 クルマのユーザーが、直感的に分かる家電とクルマのつながりといえば、カーオーディオやカーナビだ。高度成長期には家庭で大型ステレオセットを購入するのが流行。車内エンターテインメントとして、8トラックテープ、カセットテープ、CD/MDと音源の媒体が進化する中、家電メーカーの多くが自動車産業に参入した。さらに、90年代からカーナビの普及が始まり、家電も手がける大手電機メーカーが車載器と呼ばれる自動車の情報通信産業との関係が深まった。

 もうひとつが、EVやハイブリッド車などの電動化だ。なかでもリチウムイオン二次電池では基礎研究を進めたソニー、旧三洋電機の技術を継承したパナソニック、日産リーフ向けなどへの供給で技術開発を行った日本電気(NEC)などが、自動車メーカーとの関係を深めた。

 その他にも、車載に関わる制御系コンピュータ機器や、カメラや半導体に関わる各種センサー技術で家電も手がける大手電機メーカーの存在感が増していった。

 こうして大手電機メーカー各社は、部品供給メーカーとして自動車メーカーや自動車部品メーカーと密接な関係を築いていく中で、「自社でクルマを仕立ててみよう」という発想が生まれるのは自然なことだと思う。多くの場合は、実験車両に止まるのだが「あわよくば量産も」と考えても不思議ではない。

 ただし、自動車の基礎である運動性能(走る・曲がる・止まる)や、乗り心地とハンドリング(NVH)、さらに衝突前と衝突後の安全技術などについては、家電メーカーがゼロから研究開発すると多大なコストを時間がかかる。そのため、この部分は自動車開発専門の企業に外注するか、または即戦力の人材を採用することになる。

 実際、実験車両を作成した日系大手家電メーカー関係者は「EVならば、さほど難しくないと思っていたが、実際にやってみるとクルマ作りは想像以上に難しい」と本音を漏らす。

 これが、家電メーカーによるクルマ作りの実態だ。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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