プレスキットの配布に殺気立つ新興国のモーターショー
インド・デリーで開催されているAUTO EXPOでは会場最寄りに鉄道の駅ができ、デリー市内から鉄道で向かうこともできるようになった。タクシーで会場移動する際も、以前は丸一日チャーターしないと、帰りの足の確保が困難だったのに(しかも時間通りにきた試しがなかった)、いまは“ウーバー”で呼べば、数分後にやってくるようになった。
プレスパスの当日の会場での手渡しも、暗がりで段ボールの中をゴソゴソと探すことなく、チケットカウンターで係のスタッフから受け取ることができるなど、AUTO EXPO(デリーAUTO EXPO)の“進化(それなり)”ぶりには驚かされるとともに、過去の混沌とした様子が懐かしくも思えた。
出展ブランドのなかには、プレスパスの受付をしたメディア関係者へプレスリリースとプレスカンファレンス風景の公式画像を、カンファレンス終了直後にメールで送ってくるところも目立っていた。
このような動きが目立つなか、デリーAUTO EXPO名物の”殺気だったプレスキット配布風景”もなくなってしまったのかなあと思った。デリーでは紙ベースのプレスリリースとともに、“お土産”が入っており、メディアパスを持っていれば誰でももらうことができるのだ。カンファレンス終了後に地元メディア関係者を中心に、まさに“決死”といっていいプレスキット争奪戦が展開されるのである。
列へ並ぶという習慣がインドではないようで、日本のようにきちんと整列して順番を待つこともなく、われ先にと配布しているカウンターに殺到するその様子はまさに“カオス”。過去のWEB CARTOPの記事で2018年の様子が伝えられていたが、この時は出展ブランドほぼすべてで“カオス”を見ることができたという。今回もその“カオス”は絶滅せずにいくつかのブランドで残っていた。
筆者が遭遇したのは、上海汽車のMGブランドと、VW(フォルクスワーゲン)ブランドでの“カオス”。MGではプレスキット配布準備をしている間もキットを受け取ろうと、どんどんひとが集まり収拾がつかない状態となり、警備員数名が出動することとなった。混乱のなか、キットの配布開始。怒号が飛び交うなか配布が続くその風景は、とてもプレスキットの配布風景とは思えない殺気がみなぎっていた。
VWも基本的に状況はMGと同じ。MGでは参加を見送ってしまった筆者だが、VWではカオスの中へ突入していった。過去2回のショーで体験しているので身体がなじんでいるのか、意外なほどスルスルとカウンターに近づくことができ、キットをゲットすることができた。
カオス状態になるのだからさぞや、お土産は良いものが入っているのだろうと思うだろうが、MGは車内で使える充電器となり、このレベルが頂点。一般的にはロゴ入りキャップやボールペンが一般的だ。参加してみると、改めて「なんでこんなものをもらうのに、ここまで殺気立つのかがわからない」と感じてしまうケースがほとんど。VWにいたっては、紙ベースのリリースとデータの入ったUSBだけであった。
今回の流れを見ていると、このデリーAUTO EXPOの“伝統風景”も次回は完全になくなってしまうのではないかと妙な不安感を抱いてしまった。