繰り返しているとオーバーホールするしかなくなることも
普通のMTは常時噛み合い式なので、ギヤ自体はすべてフルタイムで噛み合っている。噛み合ってはいるが、ニュートラルのときは駆動輪に繋がっているカウンターシャフト側のギヤは空転していて、シフトレバーを動かし、スリーブが空転しているギヤと連結したとき、駆動力がタイヤに伝わる仕組みになっている。
このとき、スリーブはそれまでのギヤが回っていた回転数で回転していて、変速比に差がある次のギヤ=空転していたギヤとは、回転差が生じる。その回転差を無視してシフトレバーを動かし、スリーブをスライドさせようとするとギヤが鳴る。これがギヤ鳴りの正体。
シンクロ付きのミッションは、それを防ぐためにスリーブ内部に円錐のクラッチ、シンクロコーン(シンクロナイザリング)を設け、スリーブが入る前にそのシンクロコーンが、まず次のギヤに接触し、スリーブとギヤの回転数を同期させてから、スリーブが連結するようになっている。
このシンクロ機構が十分機能し同期が完了していれば、ギヤはスコッと気持ちよく入り、同期が不完全だと金属接触で「ガリッ」とギヤ鳴りが出てしまう。
このギヤ鳴りの原因は、多くの場合、クラッチの切れが不完全の場合。クラッチの踏み込みが浅かったか、クラッチミートが早過ぎたと思えばいい。
また普段からシフトチェンジが荒い人や、ギヤ鳴りを何度も繰り返すと、シンクロコーンやシンクロと噛み合うギヤコーンの突起部が摩耗して、同期させる能力が低下し、ますますギヤ鳴りしやすくなる……。
シンクロが摩耗した場合は、ミッションをオーバーホールするしかなくなるので、それなりの出費を覚悟しなければならない。
そうしたギヤ鳴りを防ぐには、
1.確実なクラッチワーク
2.正確で丁寧なシフト操作(力まずゲートに逆らわず、シフトミスは厳禁)
3.ミッションオイルの定期的な交換
が重要。
クラッチやシンクロを長く持たせるのも、MT車オーナーの腕の見せ所なので、シンクロを傷めないシフトチェンジをマスターするよう研究してみよう。