【売れなくても売る必要あり!】AT全盛のいまでもMTをラインアップすべき理由とは (2/2ページ)

MTを揃えても販売台数アップは見込めないが……

 2019年11月に発売されたロッキーの開発者は、「ロッキーを東京モーターショーに出展したら、MTがないのかと多くのお客様から尋ねられた」と述べている。スポーツモデルに限らず、クルマ好きが欲しがる車種では、数は多くないもののMTも売れる見込みがある。この点も踏まえて、最近のトヨタは、C-HR、カローラ、ヤリスなどにMTを用意するようになった。

 MTを設定したところで、売れ行きが大幅に増えることは考えにくい。投資対効果という意味では、メリットは乏しいだろう。

 それでもMTは走りの良いクルマの象徴でもあるから、「MTを選べるなら乗り替えてみようか」と考えるユーザーは、何人かは出てくるだろう。もちろん少数だが、そういう人達は自他ともに認めるクルマ好きだから、友人に話をしたりSNSで発信したりする。それを受け取った人は「クルマねぇ、そういえばウチのも、随分古くなったよなぁ」などと思うかも知れない。それでMTが売れるわけではないが、忘れていたクルマの存在が多少は蘇る。そういう効果はあるだろう。

 またATでは、セレクトレバーをDレンジにシフトして乱暴にアクセルペダルを踏むと急発進するが、MTではクラッチをデリケートに操作しないと発進できない。むしろ急発進させるには技術を要する。従ってMTであれば、必然的に誤操作による急発進事故を防げる。

 ATならハンドル操作に集中できて、安全性を高める効果もある。それぞれ一長一短だが、今はATが普及しすぎてMTの良さが見失われていることはあるだろう。少なくともMTを欲しいと思ったユーザーが、車種選びに困るような状態は避けるべきだ。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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