【公道では誰もやらない!】なぜ教習所では踏切横断の際「クルマの窓を開ける」と教えるのか (2/2ページ)

義務に関わらず安全を最大限確保することを教えている

「なぜ踏切横断の際クルマの窓を開けると教えているかと申しますと、教習所で教える内容は、安全確認に重きを置いているからです。道路交通法の義務がなくても、踏切の手前では一時停止をし、窓を開けるなどして、自分の目と耳で安全を確かめるのが理想的です。そして、踏切で安全を確認するのは、自分のため、同乗者のため、そして電車に乗っている人たちのためであり、自分と他人に対する責任です。
たしかに、教習所を卒業したあと、踏切で窓を開けるかどうかは、本人次第となりますが、『窓を開けたほうが安全』ということを知らずに街に出るのは可哀想ではありませんか。だからこそ、教習所の検定では、それを覚えているかどうかを審査しているのです」。

「違反になるかどうか、義務かどうかと、安全上大事かどうかは別の話です。たとえば、教習所では交差点での安全確認を確実にやるよう教えていますが、皆さんが街中を走っているときに、交差点で左右の確認をしていなかったとして、違反切符を切られることはありません。だからといって、左右の安全確認の重要性は変わりませんし、踏切の手前だって、窓を閉じたままより、開けた方がリスクは減るのは間違いないわけです。
したがって、路上の多くのドライバーが実践していないからといって、教習カリキュラムから、『窓を開け電車の音を確認する』というのを削除することは、いまのところ考えられません」。

 というのが、担当者による答えだった。取材前は、50~60年前、まだ遮断機も警報器もない踏切が多かった時代の名残であり、形骸化したカリキュラムという印象だったが、意外にしっかりした考えに基づいていることが明らかになった。

 窓を開けても、列車が近づいてくる音が聞こえるのは、かなり直近になってから……という気もしないでもないが、免許取得時に安全確認に対する意識を高めておくのは確かに意義があることだろう。

 ただ、「窓を開けないと、今日のハンコがもらえない」から仕方なく「窓を開けている」人が多いのも事実で、大事なことは窓を開けるアクションを通じて、「安全確認はここまでやれば大丈夫、という定量的なものではない」ことを伝えること。

 正直、踏切手前で窓を開ける必要性は感じられない部分もあるが、安全運転に終わりがないことだけは、初心者からベテランまで肝に銘じておきたいところだ。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

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