市販車には腐食対策や歩行者保護の配慮などがなされる
実際に市販車レベルでみるとランエボのエンジンフードに開けられたエアアウトレットは裏側から塞ぐような当て板が付けられていて直接雨水などが進入しないよう配慮され、また歩行者保護として頭部が直接エンジンヘッドなど固い固体に衝突しないよう配慮が施されているが、その反面エンジンフード表面のエアアウトレット形状ほど開口部は広くなく空気の排出効率は大幅に制限されてしまっている。
ラリーやレースなどモータースポーツシーンではこうした裏側の当て板を取り外し、設計値通りの排出効率を得ることが重要な作業となっていた。外観上の形状や開口面積はレース認定車両のレギュレーション面でも生産モデルにおいて設定しておく必要があり、このようなカタチとなっていたのだ。
スバル車のエアインレットもまた同じような問題を抱えているが、市販モデルでも十分な吸気効果を狙えるデザインが採用されている。歩行者保護の観点から突出部の高さを抑え、形状に丸みを持たせるなど配慮している。
エンジンフード上を流れる空気は車速やフード形状などによりじつは一様でなく、エンジンフード前端部から中央部くらいまでは負圧となっていてエンジンルームの空気を排出しやすい空力特性となっている。フード中央から後方、フロントガラスの下部までにかけては外気圧が高まり正圧となっていてエンジンルームに空気を取り込みやすい。ランエボとスバル車の穴の位置を比べると設置位置の違いがみて取れる。
日産GT-Rは小さなエアインレットを中央左右に設けているが、NACAスクープ形状というレースカーや航空機に用いられる高度な空力デザイン形状が採用されていて実面積以上に吸気効率は高いといえそうだ。
また、さもエアダクトを設けているかのような樹脂製のダクトを貼り付けて高性能車のイメージが与えられているモデルも多く存在しているが、その多くは実際にはフードに穴が開けられていないいわゆるダミーである場合も。
自分のクルマのボンネットがどういう仕様になっているのか、一度ボンネットフードを開けて裏側を覗いてみるといいだろう。