【もはや技術的には限界?】メーカーが挑んだ排出ガス規制の歴史と今後のクルマはどうなる (2/2ページ)

ディーゼル車もガソリン車とほぼ変わらない浄化性能をもつ

 乗用車への対策の一方、トラック/バスなどで使われることの多かったディーゼル車に対する規制は後追いだったが、東京都が平成11年(99年)に実施した「ディーゼル車NO作戦」によるディーゼル排ガスに対する規制強化で一気に前進した。主に黒煙の原因となる粒子状物質(PM)の大幅な削減が求められ、これが、国による平成17年(05年)の新長期規制、そして平成22年(09年)からのポスト新長期規制につながる。今日では、ディーゼルエンジン車もガソリン車とほぼ変わらない排ガス浄化性能を備えるとされる。

 しかし、スモッグの原因物質とされるNOx排出量はガソリン車よりディーゼル車のほうが多いのが実態であり、同時にまた、ガソリン車もディーゼル車と同じ直噴による燃料噴射を燃費向上のため採用したことにより、PMの発生が懸念されている。したがって欧州においては、ガソリンエンジン車に対してもPM規制が実施され、それを除去するガソリン・パティキュレート・フィルター(GPF)の装着が義務付けられている。

 今日、NOx排出量の多いディーゼル車の販売が日本で増えた結果、首都圏の上空にスモッグが再び現れはじめ、大気汚染による健康被害の再発が懸念される。

 SUVのような大型で車両重量の重いディーゼル車の人気が高まり、直噴ガソリンエンジン車が普及した今日、世界的な気候変動への対策(燃費向上=CO2排出量の削減)に加え、地域ごとの大気汚染防止対策の面においても、排ガスゼロ車両(ゼロエミッション車)であるEVの普及が一刻も早く望まれる。その先駆けが、欧州で起きている急速な電動化だ。急がなければ、気候変動も、大気汚染による人体への悪影響も手遅れとなり、人の住みにくい地球になるかもしれない。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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