【2021年以降に自動ブレーキ義務化は本当に効果ある?】高齢ドライバーによる悲惨な事故は減るのか (1/2ページ)

大多数の乗用車にAEBが備わる時代へ向かっている

 2019年12月17日、国土交通省は、乗用車等における衝突被害軽減ブレーキ(AEB)の国内基準を2020年1月に策定すること、そして国内基準においては世界に先駆けて2021年11月以降の国産新モデルから段階的に装備を義務付けることを発表した。

 数年内にすべての新車(乗用車)にはAEBが標準装備されることが決定したといえる。もっとも、ITARDA(公益財団法人 交通事故総合分析センター)の発表資料によると、2018年末時点で登録・届出されている自家用乗用車(登録車・軽自動車)のうちAEB付きが928万台で、AEBなしは246万台となっている。すでに8割近いクルマになんらかのAEBが備わっているのだ。この数値は増えることはあっても減ることはないと考えられる。

 AEB付き乗用車の登録・届出台数の推移を大雑把にいうと、2015年は103万台、2016年は295万台、2017年は572万台となっている。まさに倍々ペースでAEB装着車は増えている。現実的には、国土交通省が義務化を宣言せずとも大多数の乗用車にAEBが備わる時代に向かっているのだった。

 では、AEB装着車が増えたことで追突事故は減っているのか。前述したITARDAの調査によればAEBの効果によって追突事故は半減しているという。しかも、免許歴にかかわらず、その効果はみられるという。

 交通暴露量(台数ベースだけでなく利用頻度を示す指標)を考慮した調査結果によると、免許取得経過年数別のAEBの有無による事故低減効果は次のとおり(数字が大きいほど低減効果が大きいことを意味する)。

1年未満:58.0%

2年未満:51.2%

3年未満:48.4%

4年未満:50.3%

5年未満:61.7%

10年未満:55.1%

10年以上:55.9%

 いずれにしても、ほぼ半減していることが数字からも明らかだ。しかも、このAEBの中には赤外線レーザーレーダーを使った低速域だけでしか機能しないタイプも含まれている。最新システムでなくとも、これだけ追突事故を減らすことができるのだ。高性能カメラを用いたタイプや、複数のセンサーを使っているシステムが増えれば、さらに事故を減らすことが期待できる。AEB装着車を増やすことは事故を減らすことにつながるのは間違いない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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