遮断機が下りずに電車が通過するなんて見たことないのに……踏切手前でのクルマの一時停止が義務なワケ (2/2ページ)

横断中に列車が来ないか、渡った先にスペースがあるかを確認

 なぜ一時停止をしないといけないのだろうか。列車の運行が少なく、遮断機がないような踏切であれば、止まって確認する必要があるのは理解できるが、遮断機がある踏切ならば、どんどんと通過していったほうが効率的であるし、交通の流れもスムースになると思える。実際、海外ではそうした運用がスタンダードな国も珍しくないという。

 しかし、連続して渡ったとして、もし自分の前に走っているクルマがなんらかのトラブルで立ち往生してしまったら、踏切内に複数の車両が留まってしまうことになる。冒頭のように大型トラックが通り抜けられずに止まってしまうこともある。また、踏切の先が渋滞していて渡り切ることができずに、止まっている間に遮断機が降りてきてしまうようなこともある。対向車線から大型トラックがやってきていると、踏切内ですれ違いができないといったケースもあるだろう。

 踏切前の一時停止というのは、単にいったん止まるというだけでなく、安全に横断できる状況になっているかを確認するためのワンアクションということなのだ。一時停止は、主に横断中に列車が来ないこと、渡った先にスペースが空いていることの2点を確認するためといえる。

 なお、自動車教習所などでは踏切前で一時停止した際に、窓を開けて音でも安全を確認することが求められているが、道路交通法の文言自体には、そこまでは定義されていない。とはいえ、カーオーディオを大ボリュームでかけて、踏切のカンカン音さえ聞こえない状態というのは褒められたものではない。窓を開けなかったからといって違反を問われることはないだろうが、機械的に一時停止をするのではなく、左右と前方の安全確認をしっかりするための一時停止であることは肝に銘じておきたい。

 そして踏切内を走行するときは素早く渡ることを最優先して、無用なアクションはしないように気を付けたい。教習所ではマニュアルトランスミッション車の場合は変速しないでローギアで一気に走り抜けるように教えられるが、それはシフトミスによるエンストを防ぐため。とにかく安全を確認したら、確実に素早く渡り切ることが最優先だ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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