単にクルマを作ればいいわけじゃないのが「Fセグ」の難しさ
北米でいう「フルサイズラグジュアリー」とは、欧州的な分類では「Fセグメント」となる。このカテゴリーでは乗り心地や運動性能といった機能面だけでなく、Fセグメントにふさわしいブランド価値も求められる。いや、ブランド価値のほうが重要なカテゴリーといえる。
冒頭にあげていないブランドでいえば、ジャガー、マセラティ、アストンマーチン、ロールスロイス、ベントレーといったそうそうたるブランドが存在感を競い合うのがFセグメントなのである。資本が変わり、中身も伝統的とはいえなくとも、歴史に裏打ちされたブランドバリューがなければ勝負権さえ得られないのがFセグメントである。
そして「レクサス」はFセグメントでいえばブランドとしては新参者だ(ポルシェはFセグメントへの参入は最近だがブランドとしては古い)。このカテゴリーで認められる存在になったというだけでも大変なことである。『トヨタができたのだから、日産やホンダは何をしているんだ』と思ってしまうのは間違いだ。このセグメントへの参入はフォルクスワーゲンも試みたが、うまくいっていない。日産にしてもインフィニティ・ブランドにおけるセダンのトップモデルは北米では「G50(日本でいうスカイライン)」となっている。
トヨタだからこそ「レクサス」ブランドを育てることができ、「LS」を認めさせることができた、と考えるのが妥当だろう。他の国産メーカーが手を出さないのではなく、手を出せないといったほうが正しい。
なお、Fセグメントへ参入をはじめたのが韓国ヒュンダイの高級ブランド「ジェネシス」。たった数年でブランド価値を高めることは難しいだろうが、次なる新ブランドして認められるかどうか、注目といえる。