EVではスポーツカーとノーマルカーの違いを主張しにくい
そこにはEV特有の理由もある。EVになると、たとえばテスラ・モデルSとポルシェ・タイカンを比較しても、0~100km/hの加速はどちらも2秒台で差がない。スポーツカーの一つの高性能さを表す瞬発力において、乗用の4ドアセダンも伝統のスポーツカーメーカーも差がないのである。では、タイカンの凄さはどこにあるかと言えば、0~100km/hの加速を何度も繰り返しても、性能が落ちにくいことだ。たとえばサーキット走行をするなら、それがものをいう。しかし一般道においては、たとえ高速道路においても、0~100km/hの全力加速を何度も繰り返すことは稀だ。
また外観の造形も、効率を追求するなら空気抵抗の少ない姿が求められ、いまやエンジン車においても4ドアセダンでありながらクーペのような外観が当たり前になってきているように、スポーツカーが独自のスポーティさを明確に示しにくくなっている。
EVの時代となればなおさら、スポーツカーと一般の乗用車との違いを主張しにくくなってくるだろう。乗用車とは違う新たな価値をスポーツカーは発見しなければならない。タイカンが、急加速を何度もできるとしたのはその一つだが、日常的にもっと何からしさを体感できなければ、スポーツカーを選ぶ理由は限られてくる。
EVの時代は、自動運転などの実現も含め、クルマとしての価値(所有か利用かなど)はもちろん、エンジン車で築かれてきた車種の区別を、再構築することも求められるだろう。