ダイハツとトヨタがタッグを組んだからこそ実現できたモデル
今どきの日本のコンパクト系SUVと言ったらどんなモデルが思い浮かびますか?
トヨタC-HRやホンダ・ヴェゼル、マツダCX-3、日産ジューク……etc。これらのボディサイズは全長が4200~4300mm、全幅が1800mmを切る1750mm以上。では今回ダイハツとトヨタから登場したロッキーとライズはといえば、全長3995mm、全幅は1695mm。さらにコンパクトな5ナンバーサイズのSUVの誕生だ。この2モデルはおもにフロントまわりとホイールのデザインが異なるけれど、ほかの部分はメカニカル性能を含め共通。ダイハツが開発を全面的に行い、ダイハツはロッキー、トヨタはライズというモデル名でそれぞれ販売される。
これは“良品廉価=良いクルマを手頃な価格で”をモットーとするダイハツが、ダイハツとトヨタの両ブランド向けに、商品展開を見据えた新世代のクルマづくり(コンセプトも骨格や技術も含む)『DNGA』を採用したモデルとなる。参考までにDNGAは軽、A/Bセグメント、つまりコンパクトモデルクラスを網羅し、ダイハツとしてはタントから採用を始めているが、常用車クラスの最コンパクトクラスとなるAセグメントはこれが初めてとなる。
ではトヨタがコンパクトカーを作るのをやめるのかと言えば、そうではない。トヨタ側の担当者の言葉を借りて「トヨタがこれまでできなかった」という“小さくて軽くて手頃な価格で選べるモデル”造りなら、協力関係にある“小さくて軽くて手頃なモデル”=“良品廉価”をつくるダイハツにトヨタの“ライト級”コンパクトモデルの開発を委ねるという、パートナーシップによって実現した第一弾がトヨタ・ライズなのである。
シンプルなパーツ構成ながら押し出しの強い顔つきをしたロッキー、そしてライズはRAV4の弟分的な雰囲気を抱き、トヨタ車らしさが伝わるデザインを採用。フロントマスクのデザインこそ異なるものの共通して感じられるのがコンパクトSUVをよりコンパクトに見せるのではなく、ボディ四隅にはエッヂを効かせ存在感を魅せるデザインを採用しているような印象がある。また視認性を保つサイズのサイドウインドウを採用しながら、ボディの厚みを強調しSUVの力強さが伝わる面構成もシンプルなのにいい。ドッシリとした安定感を陰影を強めたフェンダーとともに演出している。
インテリアはデザイン性の高い大ぶりなフロントシート、見るからにシンプルな操作が期待できる運転席まわりのデザインの採用が最初に視界に入った。
メーターはLEDデジタルメーターと液晶ディスプレイを併用したマルチインフォメーションディスプレイを採用。一見するとフルスクリーンのように見える質感とデザインが与えられていた。開発者の方が「運転する楽しさを演出するコックピット」おっしゃっていたのだが、とくにメーターのデザインは4パターンから選べ、異なる雰囲気を大人も納得の質感で楽しみながら情報が得られるのがいい。またこれらを切り替えるスイッチや先進運転支援技術のスイッチ、オーディオetcの操作がステアリング上に配置され、手を離さずにさまざまな操作が可能だ。
収納系も随所に用意されているが、フロントシートのドアポケットの大きさ、センタートレイの装備そのものも使いやすそうだった。さらにココにはLED照明が手もとを照らしてくれるというもの装備の質を上げている。グレードによっては助手席の下にアンダートレイも装備され、シューズの収納にも役立つ。コンパクトカーの楽しみ方を知っているからこそのクルマづくりが感じられるのもいい。
ラゲッジの収納力は369Lという数値でも伝わるかもしれないが、上下段を変更して使えるデッキボードの活用や、デッキボード下の買い物かご2個分の広さを確保しているというアンダーラゲッジ、そしてリヤシートのアレンジなど使いやすそうなスペースづくりがされている。
アレンジ性に優れる分、リヤシートの快適性は若干犠牲になっている。座面は高めに配置され前方の視界は保たれるが、座面長は短めでなおかつフラットなのだ。つまりホールド性に欠ける点は否めない。このサイズにして十分広い空間を確かに実現している。が、このサイズゆえに広さと実用の両立は完璧とはいかない。今回優先したのはフロントシートと空間のアレンジ性と察する。