パワートレインはまるで別物のように進化している
──NAモデルに採用されたR06D型エンジンの「デュアルインジェクションシステム」は、スイフトなどのK12C型エンジンのものと同じでしょうか?
竹中:考え方は同じですね。燃料を微粒子化するものです。
渡邉:デュアルにしたポイントは、噴霧するの位置を燃焼室に近くしていることですね。それによって気化潜熱して燃焼室の温度を下げられるので、それだけ余裕ができます。
──「急速燃焼」の狙いは?
渡邉:モード燃費だけではなく実用燃費を良くすることの基本は急速燃焼ですから、燃焼室への混合気の流入速度を上げたり、タンブル比を70%ほど高めたり、燃焼室の形状も見直したりして、隅々まで確実に素早く燃えるようにしています。
竹中:自分たちでも「なんでR型のままなんだろう?」と思うくらい、多くの変更が入っています。
──ボア×ストロークとボアピッチが同じということですか?
竹中:いえ、ボア×ストロークは変えています。同じなのはボアピッチだけですね。
渡邉:急速燃焼させるために、ストロークを伸ばしています。燃焼室をコンパクトにするのにも効いていますね。それで熱損失を下げられますから。ホンダさんもマツダさんもトヨタさんも、ガソリンエンジンを極めようとしていますので、当社も軽自動車として極めようという方向に来ています。急速燃焼によって与えられた燃料を最大限エネルギーに変えるのがポイントですね。
──CVTはどちらのメーカーのものですか?
竹中:アイシンAWさんの、スペーシアから入れたものの改良版になります。効率を大幅に上げていますね。
渡邉:「改良版」と言えないくらい違いますね、ボルト類くらいしか同じものはないのではないかというくらい。CVTはベルトと油圧が肝ですから、それを新しくしているということは、基本は全部違うと言っていいと思います。それに発進のときのトルクコンバーターも変えていますから、「何が一緒ですか?」というくらいの新構造です。
──マイルドハイブリッドはどうですか?
渡邉:これもまた、全然違います(笑)。
竹中:基本的な構造は変わりませんが、エンジンへの取付やチューニング、部品自体も変わっています。ISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)はモーターの出力を上げていますし、バッテリーも定格容量は同じですが充放電の効率を高めています。モーターが低速から力強く助け、高速域も100km/hまで対応するようになっています。エンジンとCVTとマイルドハイブリッド、全部三位一体で新しくなっていますね。
──ADASについては機能追加のほかに、ハードウェアも変わっているのでしょうか?
竹中:変わりました。現行ハスラーのものは大きめでルーフ自体に装着されているのですが、新型のものは小型軽量化されて、フロントガラスに取り付けるようになっていますね。システム自体はソリオのマイナーチェンジで採用されたものをベースにしています。
──ACCや車線逸脱抑制機能がターボ車のみに設定されているのが惜しいですね。
竹中:遠出する方はターボ車ユーザーの方が多いという考えからですね。基本的な走りのポテンシャルに加え、そういった機能面のプラスも含めて、選んでいただきたいと思っています。
──ありがとうございました。