【なぜ知名度抜群のプリウスじゃなくてUX?】トヨタ初の市販EVがレクサスブランドから登場するワケ (2/2ページ)

プリウスでは価格はもちろん車両側にも課題が多く生じる

 しかし、おそらくプリウスのボディでBEVにするとネガが出てしまうのだろうと考えられる。UX300eの透視図やメカニズムを見れば一目瞭然だが、総電力量54.3kWhという非常に巨大なバッテリーをキャビンのフロア部分に敷き詰めるように搭載している。こうしたレイアウトはUXがクロスオーバーSUVだからこそ可能になったといえる。プリウスでは最低地上高が犠牲になってしまうだろう。そもそもロードクリアランスとサスペンションストロークに余裕のあるSUVは、コンバージョン的な成り立ちのEVと相性がいいのだ。

 さらに、この大きなバッテリーパックは高価なアイテムであることも容易に想像できる。しかも単に多くのバッテリーを積んだのではなく、バッテリーの温度管理機能などハイブリッドやプラグインハイブリッドでの経験を活かした制御も実装されている。具体的な価格は不明だが、けっして安く済ませたという印象はない。

 バッテリーのコストは車両価格にも反映されるわけだが、もしプリウスがベースだとしたら価格上昇分が目立つことになる。しかし、もともとプレミアムゾーンのモデルであればEVによる価格上昇を目立たせなくすることが期待できる。その点でもレクサスをベースに選ぶというのはブランディングからして相性がよさそうだ。たとえば、ハイブリッドに対してBEVが150万円高になるとして、250万円のベースモデルよりは450万円のベースモデルのほうが価格上昇の度合いは少なく感じるだろうという話だ。

 トヨタであっても、初物だけに無駄を省くことは難しいだろう。むしろ初物だからこそ念入りな設計となっているはずで、必要最低限の仕様に削り取ることは考えにくい。そうなるとレクサスというプレミアムブランドで展開したほうが、価格上昇を許容できるユーザーに訴求できる可能性は高い。

 さらに、まだまだ生産技術をブラッシュアップしていきながら量産していくだろうことを考えると、いきなり大量に売れるブランドで勝負するのは怖い部分もあるだろう。プレミアムブランドのレクサスからBEVを展開するというのは理にかなっているといえる。そして、この経験を活かしてコストダウンを進めながら、トヨタはBEVを拡大していくことだろう。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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