欧州のレースの社交界がリアルに描かれた作品 「ミシェル・ヴァイヨン」 2003年にフランスで制作されたこの映画はリュック・ベッソン監督作ということでストーリーや演出はハチャメチャだ。レースマニアが見たら眉をひそめたくなるようなシーンが連続する。舞台はル・マン24時間レース。映画撮影の為に実際のル・マン24時間レースに劇中車をエントリーさせ走行シーンを撮影したことでも話題になった。当時「もしトップを走行していたとしてもシーン撮影の為にピットストップしたりするのか」など注目を集めていたものだ。
ル・マン24時間レースに出場するための予備予選に参加するため移送中のトレーラーがライバルチームの陰謀で事故を起こし、主人公らがトレーラーからレース車両を降ろし、公道をかっ飛ばし、途中ガソリンスタンドで給油したりしながらそのままサルテ・サーキットにコースインして予選に間に合ったというあり得ない設定。ほかにも事故死したレーサーの奥方が夫の無念を晴らすため自らレーサーになってル・マンのレースに出場するなど本物感はまったくゼロ。
レーシングドライバーがお勧めする本格的レース映画 画像はこちら
ただお薦めするのには訳がある。それは欧州のレースを中心とした社交界が描かれていたことだ。主人公のレーサーは欧州のスポーツカーメーカーの子息であり跡取り。自ら新型スポーツカーやレースカーの開発にドライバーとして携わり、アラスカの寒冷地テストやWRCラリーにも参画する。モンテカルロラリーでは本番前のパーティーが描かれモータースポーツに関る欧州の裕福な社交界が垣間見える。実家は古城のような大邸宅。日本人には想像もつかない世界観だが実際にそうした層が欧州には存在している。そうした世界に踏み込むのはドライバーとしての才能があるだけでは不可能なのだと思い知らされた。
このようにレースを題材とした映画は多くの現実と事実を表現しながら、今となっては再現不可能な過去の名車や旧サーキットの姿を見させてくれる。一方CG技術の発達で映像的な不可能はなくなりつつあるのかもしれない。最新作「フォード vs フェラーリ」が話題となっているが、いかなるストーリーとシーンが展開されているのか、公開されたらリポートしたいと思っている。