マイルドハイブリッドのガソリン車に心酔
■ゴルフにはeTSIが必要十分
試乗できたエンジンは二種類。一つは新しく開発された48Vのマイルド・ハイブリッドeTSI。1.5リッターは48Vで駆動するBSG(ベルト・ドリブン・スターター・ジェネレーター)を装備している。二つ目は2リッターディーゼルだ。大幅に手を加えた新世代のディーゼルエンジンに、期待できる。それでは実際の乗り味はどうなのか。
まずはeTSIをテストした。1.5リッターの4気筒ターボは、48VのBSGのおかげで、発進時の駆動アシストがうれしい。さらに回生ブレーキ、エンジンのスターターと多様な機能が可能だ。DSGが苦手だった発進時のクラッチのギクシャク感は見事になくなった。さらに一定速度で走っているとき、エンジンを休止させるコースティングが可能なので、燃費も良さそう。エンジン本体は最大250N・mと十分なトルクを絞りだす。
ディーゼルはどうか。2015年に起きたディーゼルゲートは完全にみそぎを終えたかのように、新しいディーゼルを開発し、排ガス性能では尿素SCRをツインインジェクターにすることで、NOxを大幅に除去できるようになった。新世代のディーゼルエンジンは今まで以上に静かで振動も少ない。最大トルクは360N・mと十分だが、正直に言うと、ゴルフではすこし持て余してしまいそうだ。
eTSIとTDIを比較すると、今回はeTSIに軍配を挙げたい。というのはゴルフ8としてはガソリンエンジンのほうが魅力を増しているからだ。モーターが発進をアシストするので凄く自然に走れる。ディーゼルエンジンはSUVのAWDと組み合わせたほうがいいだろう。
■クルコンとレーンキープアシストが使いやすい
ハンドリングは先代よりもスポーティになった。というのは、今回試乗したのはガソリンもディーゼルも、スポーツサスDCC(電子制御可変ダンパー)を装備したハイスペックのモデルだったからだ。電子制御ダンパーはコンフォートとスポーツを切り替えることができる。このスポーツシャシーにはアルミ製のサブフレームがおごられている。スティール製のサブフレームと剛性はアルミに分があるが、コストではスティールが安い。日本にはどのモデルが導入されるか未定だが、DCCはかなりスポーティでハンドリングは楽しかった。乗り心地は先代ゴルフよりも改良され、静粛性も大幅に向上している。
個人的に感心したのは、進化したドライバー・アシストシステムだ。もちろんレベル2の自動化技術を採用しているが、ACCとLKASが使いやすい。さらにトラベルアシストと呼ばれるC2X(カートゥカー)の機能も実用化している。通信機能は各国で異なるので、日本の仕様はまだ未定だ。
予防安全技術では右折時(海外では左折時)のクルマ同士の事故を防ぐ機能も備わっている。進化したゴルフの予防安全は必見だ。
■日本への導入は2020年の末となる模様
期待する日本の市販時期であるが、どうも来年2020年の末になりそうだ。価格は現行から大幅に高くなることはなさそうだが、5ドアハッチではなく、米中で市販する4ドアセダンも魅力的だ。メルセデスのCLA(Aクラスベースの4ドア)の売れ行きを見ると、日本の年齢が高い層の人たちには、コンパクトなプレミアムセダンが似合いそうだ。
また、ゴルフには1リッター3気筒エンジンを搭載するエントリーモデルも存在するが、価格次第ではゴルフを浸透させる立役者になりそうだ。いずれにしても、勝敗はマーケティング。既存の価値感から卒業できれば、VWゴルフも日本で人気がでそうだ。ゴルフ8が市販される頃、日本ではEVのID.3もデビューする。電気かエンジンか。うれしくも悩ましい選択になりそうだ。