日本におけるドイツ車優勢の状況が崩れる予兆も
マニアックなクルマ好きにおいては「ドイツ車の目指す方向が正しい」と認識されている傾向も見て取れます。悪くいえばある種の思考停止ですが、CO2削減にディーゼルが効果的といえばディーゼルを推し、環境対応にはEVが必須といえばEVを評価するような態度というのは、ドイツ車のブランディングに影響を受けている面があるといえるでしょう。
「ドイツのクルマづくりは信頼できる」、「ドイツ車の目指す方向が正しい」というのはドイツ車全般が持つイメージの一面ですが、じつは初期故障率などの品質調査で明らかにドイツ車が優位というわけではありません。それはJ.D.パワーによる自動車初期品質調査の結果などを見れば明らかです。つまりドイツ車への信頼度はブランディングによるものといえます。
日本では国産車が大多数で、輸入車というのは趣味性が強いカテゴリーの商品ですから、ブランドに心酔して選ぶという面はあるでしょうし、また乗り味といった個人の趣味趣向に左右される評価軸においてドイツ車が選ばれることを否定するわけではありません。ただし、ドイツ車の目指す方向を基準として評価すれば、ドイツ車がもっとも優秀という結論に達するのは当然です。
グローバル化が進んでいるといっても、まだまだクルマの乗り味など定量化しづらい要素においては各メーカーの違いは大きく、ドイツ車の方向性を評価する人が多ければ、そうしたニーズを満たすクルマが売れるのも当たり前の話です。
クルマが売れるというのは商品力だけでなく販売力も重要な要素です。販売力というのは大きく見ると店舗数に比例的といえます。そして売れているブランドは店舗数も増やせますし、きめ細かなサービスも可能になります。ドイツ車のなかでもとくにメルセデス・ベンツにおいては、そうした正のサイクルが回ることで販売台数を伸ばしているという面があるでしょう。逆に、フォルクスワーゲンやアウディは前年比で90%前後と販売を減らしています。
一方でボルボ、ジープ、プジョーといった非ドイツ系の輸入ブランドは、前年比で伸びています。2019年1月~11月の期間でいえばジープが前年比118%と増えているのが目立ちます。現時点では、日本の輸入車市場はドイツ勢が圧倒していますが、トレンドとしては多様化が進みつつあるといえそうです。