名ばかりのSUVはいらない! レーシングドライバーが語る災害時にも役立つ本格派SUVの条件とは (2/2ページ)

待望の日本復活となったトヨタRAV4の悪路走破性は高い!

 だがSUVを名乗っていても、そうした災害状況で期待したような走破性を発揮できないものも多く存在している。SUVとして本物の機動性を与えられているかどうかを判別するための目安をここではご紹介しておきたい。

 まず駆動方式だ。これは4WDであることが必須だ。電子制御の進化により、2輪駆動でも一定以上の踏破性を備えることもできるが、4WDなら単純に2輪駆動の2倍のトラクションを得られる。

 次に最低地上高の値が200mm以上あること。RAV4は200mm。ジープ・ラングラーは最上級グレードのルビコンなら277mmもある。

 そしてアプローチアングル(1)やディパーチャーアングル(2)、ランプブレークオーバーアングル(3)が大きく取られているか。

 RAV4は(1)が18度、(2)は20.5度、(3)は17.5度となっているが、ジープ・ラングラーの数値は(1)44度、(2)37度、(3)22.6度(4ドア)〜27.8度(2ドア)と圧倒的だ。加えて最深渡河性能は76.2cmもあり、腰ほどの高さの水深でも走行できる。また車体下面を保護するアンダーガード装着の有無も重要だろう。

少なくともこれらに類推する装備と性能がSUVを名乗るなら必要であり、それを満たしていないモデルでは、一般ユーザーがSUVにイメージしている悪路走破性は発揮できないと考えるべきだ。

 スタイリッシュでデザイン性の高いクーペスタイルのSUVが流行の兆しを見せているが、格好だけでなくRAV4やジープ・ラングラーが示したような本格的なロバスト性と、舗装路や高速走行時の快適性と安定性さらに燃費性能も求められている。

 かつて「名ばかりのGTは道を開ける」というCMフレーズが話題となった時代(1979年)があったが、今は「名ばかりのSUVはいらない」のだ。ユーザーはSUVに対する正しい知識と見識を持って選択してもらいたいと思う。そしてメーカーにはスポーツカーに対してハイスピードドライビングスクールがあるように、SUVを使いこなすための悪路走破を体現するエクスペリエンスイベントを積極的に開催してもらいたい。とくに今回本賞を獲得したRAV4のトヨタと特別賞を受賞したジープにはそうした役目を果たしていってもらいたいと願う。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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