【スバルがこだわる水平対向エンジン!】そんなにいいならなぜ他メーカーは採用しないのか (2/2ページ)

苦労を伴ってでも全車に採用するのはエンジニアのこだわり!

 水平対向エンジンの特性は、スポーツカーに搭載するには理想的ながら、低燃費な実用車には不向きとなる要素が多く、コストも高くなりがち。理論上は優れた要因が多い水平対向エンジンをSUBARU以外のメーカーが新しく採用しない理由は、まさにそこにある。ポルシェでも、リアルスポーツ性能を追求する911やボクスターでは水平対向を採用し続けているが、それ以外のモデルではV型を採用。前述した理由によるところが大きい。

 SUBARUは前身企業が中島飛行機という航空機メーカーだったので、航空機用エンジン「栄」など、ピストンが向かい合う形で作動する星型エンジン作りの歴史があったことも水平対向エンジンにこだわる理由のひとつだ。航空機メーカー時代から続く100年以上の歴史は、大事なアイデンティティでもある。

 そんなSUBARUも、初代インプレッサの開発構想段階では直列4気筒の搭載が検討され、テストでは好結果が得られた試作車まで作られたが、やはり最終的には水平対向エンジンが採用された。

 SUBARUのエンジン設計部で主査を勤めた経験をもつ野村宅志氏は、「我々はクルマに『愉しさ』を追求するメーカーなので、クルマの心臓部であるエンジンには、燃費や出力などの性能に加えてドライバーが『楽しい!』『気持ちイイ!』と感じる要素が絶対に必要不可欠。もちろん移動のための道具として優秀であることは大前提ですが、我々が市場に求められているのはそれだけではないという事実は強く認識しています。そんな我々が理想のクルマを追求した結果、今もたどり着くのが水平対向エンジンなのです」と力強く、かつ自信に溢れる様子で語った。

 SUBARUのエンジニアたちは、水平対向エンジンには弱点を補ってあまりある魅力を感じており、他社が諦めた問題点にあえて挑み、克服することにもやり甲斐を見出しているのだ。

 さらに野村氏は、水平対向エンジンの開発で難しいことのひとつに、「実用車ではほかにやってるメーカーがない」という点も挙げた。参考にしたり比較対象にしたりする存在がほかにないため、問題点のすべては自分たちで探し、解決して行かなければならない。わずかでも立ち止まるとたちまちライバルたちに置いて行かれ、世のなかの時流に乗り遅れてしまう怖さがある。しかし野村氏は、そこにもやり甲斐や醍醐味を見出しているエンジニアがSUBARUには多いのだという。

「他社が歩かない道を行くからこそ、SUBARUは他に類を見ない独自性を保ち、世界の強豪を相手にしても生き残ることができたのだと思います。水平対向エンジンが抱える問題点を独自に解消していくことは、難しいと同時にエンジニアとしてたいへん面白い仕事でもあるのです」

 SUBARUのファンは、水平対向エンジンそのものに魅力を感じるとともに、こうしたSUBARUのエンジニアたちの想いや志に惹かれてSUBARU車を選んでいる人も多い。


マリオ高野 MARIO TAKANO

SUBARU BRZ GT300公式応援団長(2013年~)

愛車
初代インプレッサWRX(新車から28年目)/先代インプレッサG4 1.6i 5速MT(新車から8年目)/新型BRZ Rグレード 6速MT
趣味
茶道(裏千家)、熱帯魚飼育(キャリア40年)、筋トレ(デッドリフトMAX200kg)
好きな有名人
長渕 剛 、清原和博

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