ショックがない無段変速がメリットなのになぜ? クルマのCVTに手動変速可能なパドルが装備されるワケ (2/2ページ)

あえて加速時にエンジン回転数を変動できる機能も

 また、CVTの特徴はシームレスな加速にあるのだが、ステップATに慣れ親しんだユーザーからは、エンジン回転数が一定に近い状態で加速していくのは不自然という声もある。ある程度、エンジン回転が上がってからシフトアップしてエンジン回転が下がるというのを繰り返すリズムがあると、速度の把握がしやすいという意見もある。そこで、最近では、マニュアルモードにしなくとも、あえて加速時にエンジン回転数を変動させる「ステップ変速制御」を採用するメーカーも出てきている。

これはユーザーニーズに応えた機能とはいえ、CVTが本来持つスムースさや省燃費性をスポイルするような制御であって、本質的な解決策とはいえない。じつはステップ変速制御を採用しているモデルであっても、全開加速をするとエンジン回転数を固定に近い状態としてCVT側で変速するような制御を行なっている。体感的にはステップ変速のほうが加速感を感じられるが、CVTの特性を活かしたエンジン回転数をキープする走りのほうが加速性能には有利だからだ。

 CVTだけではなく、多段変速機構を持たないモーターだけで駆動するような電動車両でもパドルを備えるケースは増えている。電動車両の場合は、回生ブレーキ(減速エネルギーによる発電)の強弱をパドルの操作によってコントロールしようというもので、やはりアクセルオフでの減速感をドライバーがコントロールできる幅を広げるのが狙い。ただし、電動車両ではステップ変速を疑似的に再現することへのニーズはそれほどないようだ。

 まとめると、パドルシフトなどによるマニュアルモードは、減速感をコントロールするのには有効で、それはCVTに限らず電動車両でもスタンダードな装備となっていくことだろう。ただし、加速時におけるステップ変速制御は新しいメカニズムに慣れないドライバーに対するサービスといえ、効率面を考えるとずっと続くとは考えづらい。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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