システムが進化しても高齢者には効果が薄い傾向
では、年齢別にはどのような効果の違いがあるのでしょうか(軽自動車に限定しているので前述のデータとは若干数字が異なる点に注意)。
第一世代AEB
29歳以下:33.7%
30~49歳:42.5%
50~64歳:40.3%
65~74歳:31.3%
75歳以上:14.9%
第二世代AEB
29歳以下:60.1%
30~49歳:69.9%
50~64歳:67.0%
65~74歳:55.4%
75歳以上:38.3%
どの世代でも第二世代AEBの事故低減効果が大きくなっていますが、やはり75歳以上ではAEBの効果が明確に少なくなっています。それぞれ世代別の軽減率ですから追突死傷事故自体の絶対数とは関係のない数字です。ちなみに、追突死傷事故を多く起こしているのは29歳以下と75歳以上の世代となっているのは言うまでもありません。
今回の研究発表は、交通暴露量を考慮してAEBの追突死傷事故における効果を把握するためのものですから、75歳以上の運転手においてAEBの軽減率が小さくなっている理由までは言及されていません。しかし、ここまで違いがあるとなれば、「高齢ドライバーにはAEB装着車を義務化すれば交通事故を防げる」とはいかないといえます。明らかに効果が薄いわけですから。
たとえばAEBをキャンセルする操作としては、アクセルペダルを踏み続ける、ブレーキペダルを踏んでしまうといったものがあります。AEB作動時でもドライバーの操作がオーバーライド(優先)するという設計のためです。高齢ドライバーがそうした操作をしているから効果が薄いと断定はできませんが、少なくとも障害物や歩行者を検知している状態ではドライバーのオーバーライドを許さないような制御を認めていく必要があるのかもしれません。少なくとも、そうした検討をすべきということを、イタルダの研究発表は示しているのではないでしょうか。
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